ネール温度(読み)ネールオンド(英語表記)Néel temperature

デジタル大辞泉 「ネール温度」の意味・読み・例文・類語

ネール‐おんど〔‐ヲンド〕【ネール温度】

反磁性体反磁性から常磁性への移行を生じる温度フランスの物理学者L=ネールが理論的に解明。1970年、ネールは同業績を含む磁性研究ノーベル物理学賞受賞ネール点

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネール温度」の意味・わかりやすい解説

ネール温度
ねーるおんど
Néel temperature

反強磁性体の磁気的相転移温度。TN記号が使われる。フランスの物理学者ネールが、初めて反強磁性体を理論的に解明したことに由来する。TNは、強磁性体のキュリー温度Tcに対応する。反強磁性体を高温から温度を下げてくると、TNで原子磁気モーメントが整列し始める。反強磁性体では、TN以下で磁気モーメントが交互に上向き下向きとなるように整列しているので、全温度範囲で、巨視的には常磁性のようにふるまう。多くの反強磁性体では、常磁性磁化率TNで最大となるので、磁化率の温度変化測定はTNを知るための有力な実験的手段である。TN以上では、原子磁気モーメントの方向は乱雑になり微視的にも常磁性となる。ネール温度の名称は、螺旋(らせん)磁性などの広義の「反強磁性体」についても使われる。TNは絶対温度で、1K以下から1000K付近まで広く分布する(MnCl2・4H2Oでは1.68K、MnF2で72K、MnOで122K、NiOで520Kなど)。

[宮台朝直]

『金森順次郎著『磁性』(1969・培風館)』

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化学辞典 第2版 「ネール温度」の解説

ネール温度
ネールオンド
Néel temperature

ネール点ともいう.ネール温度は反強磁性体の部分格子の自発磁化の消失する温度,すなわち反強磁性相と常磁性相との間の相転移の温度で,強磁性体のキュリー温度に対するものである.反強磁性体の研究者L. Néelの名をとった.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

法則の辞典 「ネール温度」の解説

ネール温度【Neel temperature】

反強磁性体の温度を上げていくと,隣り合うイオンスピンが反平行状態から無秩序(ランダム)な状態へ遷移する点がある.この温度のことで,ネール点*とも呼ばれる.

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世界大百科事典(旧版)内のネール温度の言及

【キュリー温度】より

…なお,強誘電体が常誘電体に転移する温度もキュリー温度と呼ばれる。また一時期,反強磁性体,フェリ磁性体が常磁性体に転移する温度などもキュリー温度と呼ばれたが,こちらは現在ではその研究を行ったL.ネールにちなみ,ネール温度またはネール点と呼ばれる。(2)きわめて低い温度領域では,温度を測定すること自体が実際上の大きな問題点であり,適当な常磁性物質を温度計として採用し,その磁化率が絶対温度に反比例するというキュリーの法則に厳密に従うとして,測定された磁化率から温度を定めるという方法が行われる。…

【ネール】より

…P.ワイスに始まる強磁性体の分子磁場の手法を拡張し,反強磁性ならびにフェリ磁性の概念を確立した。反強磁性体の常磁性体への転移温度をネール温度と呼ぶが,これは彼の名にちなむ。70年には,これらの研究によってノーベル物理学賞を受賞した。…

※「ネール温度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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