翻訳|regional jet
小型ジェット旅客機のこと。英語の頭文字をとってRJと略す。座席数50~100席程度、航続距離2000~3000キロメートル。リージョナル(regional、地域の)という名のとおり、従来プロペラ機が飛んでいた地方空港の利用を見込んだ航空機である。中・大型ジェット機に比べ低燃費・低騒音で、短い滑走路で離着陸でき、飛行時間1~2時間程度のハブ空港と地方空港や、地方空港どうしを結ぶ路線に適している。1990年代以降、大都市間の航路には大型機が就航する一方、新興国の経済成長や格安航空会社(LCC)の台頭により、地方空港には効率のよい小型機が求められ、リージョナルジェット市場が急成長した。しかしその後、「飛び恥(フライトシェイムflight shame)」ということばに象徴される環境保護運動による航空機利用の敬遠傾向に、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の世界的流行、新興国関連の紛争の続発、燃料費の高騰が重なり、市場は伸び悩んでいる。日本航空機開発協会によると、2019年末時点で世界で3404機のリージョナルジェットが運航しているが、2040年には約2680機にとどまる見通しである。
リージョナルジェット市場は、カナダのボンバルディア社(Bombardier)とブラジルのエンブラエル社(Embraer)が二分していたが、中国の中国商用飛機有限公司(COMAC)、ロシアのスホーイ社(Sukhoi)が新規参入した。しかし膨大な開発費や市場の伸び悩みが負担となり、ボンバルディア社は欧州エアバス社や三菱重工業へ航空機事業を売却し、いったん交渉に入ったアメリカ・ボーイング社とエンブラエル社の事業統合が破談になるなど、業界の主導権争いは混沌(こんとん)としている。日本では、政府の環境適応型高性能小型航空機の開発構想(2002)に応じ、三菱航空機が2008年(平成20)から、90席級・航続距離約3700キロメートルの新型機「スペースジェット(旧、MRJ)」の開発を進めてきたが、2013年以来、初号機の納入延期を6度繰り返した後、2020年(令和2)、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う需要減などを理由として開発事業を凍結した。
[矢野 武 2022年6月22日]
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