改訂新版 世界大百科事典 「レーヌアール」の意味・わかりやすい解説
レーヌアール
François Raynouard
生没年:1761-1836
フランスの劇作家,学者。南フランス,ブリニョルに生まれる。弁護士となったが,1791年立法議会議員に選出され,ジロンド党の主張に同調してバスティーユに収監された。獄中で書いた悲劇《ウティカのカトー》(1794)で成功を収め,1803年アカデミー・フランセーズの懸賞詩に応募し《アグラウル神殿のソクラテス》で1位入賞。05年コメディ・フランセーズで上演された《テンプル騎士団》はコルネイユ以来の傑作といわれ,刊行されると6000部売れた。07年アカデミー・フランセーズ会員。ナポレオン失墜後,政治に興味を失い中世文学,とくに中世南フランス文学研究に専念し,雑誌《学者評論》に200編近い論文を発表した。16年から刊行をはじめた《トルバドゥール詩選》6巻は基本的テキストとなった。《ラテン・ヨーロッパ諸言語の比較文法》(1821)はプロバンス語を祖語とする誤りをおかしたものの,ディーツによるロマンス語比較文法の基となった。この本の存在をディーツに教えたのはゲーテであった。比較文法grammaire comparéeという術語はレーヌアールが考案したものである。
執筆者:松原 秀一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報