チュニジアのメジェルダ河口にあったフェニキア人植民市。前12世紀創設と言われる。肥沃な後背地を控えフェニキア海上交易網中で常にカルタゴに次ぐ地位を占めた。第3次ポエニ戦争でローマに協力した結果,戦後,属州アフリカ内7自由市の一つとされ,旧カルタゴ領の一部を獲得,総督駐在地としてローマのアフリカ支配の要となった。属州の穀物の集散地であり,この地のローマ騎士層は当時の政治史の諸局面に登場する。共和政末期には小カトーら反カエサル派の拠点となり,カエサル勝利後,再建されたカルタゴ市に繁栄を奪われた。帝政下コロニア(植民市)に昇格し一定の発展をみたが,古代末に衰退した。港湾は土砂に埋もれ現在では内陸の小村としてのみ,その名をとどめている。
執筆者:栗田 伸子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
北アフリカ、現在のチュニジア北部、メジェルダ川(古名バクラダス川)河口にあった古代都市。フェニキア人の植民活動によって創設された港湾都市としてカルタゴ帝国下に繁栄し、最古期の遺跡は紀元前8世紀までさかのぼることができる。第3回ポエニ戦争(前149~前146)の際にカルタゴに対抗してローマを支援したことから、カエサルによるカルタゴ市の再建まではローマの北アフリカ属州の首府であった。反カエサル派の共和政信奉者小カトーがこの地で自殺したことは有名な事件である。帝政期の都市制度上では、アウグストゥス帝のもとでムニキピウム(自治市)となり、ハドリアヌス帝の治世にはコロニア(植民市)に昇格している。
[本村凌二]
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