日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブロア」の意味・わかりやすい解説
ブロア(Léon Bloy)
ぶろあ
Léon Bloy
(1846―1917)
フランスの作家。ペリグーに生まれる。作家バルベー・ドールビイBarbey d'Aurevilly(1808―89)の感化でカトリックに改宗。パリの街娼(がいしょう)との神秘的な共棲(きょうせい)生活を縦糸とし、聖書の秘教的解釈を軸とする歴史観を基底に、同時代の教会と文壇を痛罵(つうば)した小説『絶望した男』Le Désespéré(1886)は、カトリック復興の起爆剤となった。彼の歴史観の主題はキリストの受難を原点とする苦悩であり、この主題は第二の自伝的小説『貧しい女』(1897)のなかで、苦悩の可換性というカトリック的秘義の一変奏として深化され、評論『ユダヤ人による救い』(1892)、『貧者の血』(1909)などのなかでも敷衍(ふえん)されている。ほかに『常套句(じょうとうく)釈義』Exégèse des lieux communs(1902)をはじめとする数多くの評論、怪異談的短編集『血の汗』(1893)、『恩知らずの乞食(こじき)』Le Mendiant ingrat(1898)を含む表題付きの日記八冊など。孤高の作家だったが、直接にはジャック・マリタン夫妻や画家ルオーに、間接にはベルナノスやジュリアン・グリーンの作品に深い影響を与えている。
[渡辺義愛]
『田辺貞之助訳『絶望者』(1984・図書刊行会)』▽『水波純子訳『貧しき女』(1982・中央出版社)』
ブロア(フランス)
ぶろあ
Blois
フランス中部、ロアール・エ・シェル県の県都。人口4万9171(1999)。パリの南西177キロメートル、ロアール川右岸に位置する。6世紀以来の伯爵領で、ルイ12世により王領となり、16世紀から王家が好んで居住した。ロアール川沿いに建つブロア城は、歴代の領主の増改築(13~17世紀)により、ゴシック、ルネサンス、古典と三つの建築様式が同時にみられる。司教区が置かれ、サン・ルイ大聖堂(17世紀)、ロマネスク・ゴシック様式のサン・ニコラ教会などが残る。16世紀、三部会が二度当地で開催された。アンリ3世によるギーズ公アンリ暗殺事件(1588)の場所としても有名。従来からの行政・商業機能の強化に加えて、ロアール川城巡りの中心地としての観光地化、機械、電気機械、印刷、チョコレート製造などの工業化によって、人口が増加した。
[高橋伸夫]