日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディーツ」の意味・わかりやすい解説
ディーツ
でぃーつ
Robert Sinclair Dietz
(1914―1995)
アメリカの地質学者、海洋学者。海洋底拡大説の提唱者の一人。ニュー・ジャージー州ウェストフィールドに生まれる。イリノイ大学で学位を取得(1941)し、有名な海洋地質学者シェパードFrancis Parker Shepard(1897―1985)に師事した。大陸周辺、深海の海底地形や地質、海のスリックslick(海面の縞(しま)模様のこと)などに関する研究がある。1953年(昭和28)、フルブライト研究者として東京大学に留学し、海上保安庁水路部においても研究を行った。このとき第五海洋丸遭難の原因となった明神礁(みょうじんしょう)爆発音の海中における伝播(でんぱ)を研究し、さらに北西太平洋海山列(天皇海山列)の個々の海山に「神武(じんむ)」「綏靖(すいぜい)」「安寧(あんねい)」……と歴代天皇の名をつけたので有名。1961年、大洋の新しい海洋底は中央海嶺(かいれい)に沿う地殻の発散によってつくられつつあるという海洋底拡大説を唱えた。とくに「海洋底拡大」sea-floor spreadingは彼の造語といわれる。ヘス、ヘーゼンとともに、この理論提唱者の一人である。1977年よりアリゾナ州立大学の地質学教授を務めた。
[半澤正男]