日本大百科全書(ニッポニカ) 「われわれ集団」の意味・わかりやすい解説
われわれ集団
われわれしゅうだん
we-group
アメリカの社会学者W・G・サムナーの提起した集団概念。一般に、点在する小集団群からなる未開社会では、親族、近隣、同盟などの関係で結び付いている「われわれ」という感情でカテゴライズされる集団(内(ない)集団ともいう)と、それ以外の「他者の集団」(外(がい)集団ともいう)の分化が明瞭(めいりょう)である。そしてわれわれ集団内部は互いに平和・秩序・法の関係にあり、他者との関係は、協約がそれを和らげない限り戦争や略奪の関係にある。また、われわれ集団への愛や忠誠と、他者の集団への敵意、闘争の関係は相関的に発展する。サムナーはまた、われわれ集団がすべての中心であり、自己の慣習や道徳を唯一の正しいものと思い込む傾向を民族中心主義(エスノセントリズム)とし、近代における愛国心の問題をも論じている。なお、アメリカの心理学者G・W・オールポートは、その「偏見」に関する理論を、われわれ集団の概念から説明している。
[大塩俊介]
『W・G・サムナー著、青柳清孝他訳『フォークウェイズ』(1975・青木書店)』▽『G・W・オルポート著、原谷達夫他訳『偏見の心理』(1968・培風館)』