日本大百科全書(ニッポニカ) 「内集団・外集団」の意味・わかりやすい解説
内集団・外集団
ないしゅうだんがいしゅうだん
in-group, out-group
集団の閉鎖性、排他性という傾向に着目してつくられた一対の概念。アメリカの社会学者W・G・サムナーの用いたことば。内集団は、個人が自らをそれと同一視し、所属感を抱いている集団で、それに対して外集団は、「他者」と感じられる集団で、競争心、対立感、敵意などの差し向けられる対象である。一般に、内集団への所属感や愛着が増し、その凝集性が高まるとき、それに応じて外集団への対抗心や敵意が強まるという傾向のあることが知られている。この対内凝集と対外排斥の相関という事実が、内集団・外集団の関係におけるもっとも興味深い点である。したがって、この二つの集団の区別は、客観的基準による区別というよりは、集団成員の内と外に向けての心理の動きに応じて輪郭づけられてくるものといえよう。
このような心理の動きは、戦争の際の愛国心の高揚と敵国への憎悪の激発といった現象や、自民族の神聖視と他民族の蔑視(べっし)、排斥という、いわゆる自民族中心主義(エスノセントリズム)などのなかに典型的に現れる。これらの場合、人々の自然発生的な心理の動きだけでなく、外集団への憎悪をあおりたてて内集団の凝集を高めようとする世論操作も作用していることが少なくない。西欧諸国ではそうした外集団として、しばしばユダヤ人が選ばれ、排斥の対象とされ、スケープゴート(贖罪(しょくざい)羊)とされてきたことはよく知られている。なお、日本でいう「身内」と「よそ者」という集団の区別は、多分に成員の主観的意識に関係するものであって、その意味で内集団・外集団の区別の一つのあり方を示すものといってよい。
[宮島 喬]
『W・G・サムナー著、青柳清孝他訳『現代社会学体系3 フォークウェイズ』(1975・青木書店)』▽『G・W・オルポート著、野村昭他訳『偏見の心理』合本版(1968・培風館)』