改訂新版 世界大百科事典 「アグーチ」の意味・わかりやすい解説
アグーチ
agouti
背中の丸い,ずんぐりした体に,細長いスマートな四肢をもつウサギ大の齧歯(げつし)類。パカ科アグーチ属Dasyproctaに属する哺乳類の総称で,約10種が知られる。体色は赤褐色から暗褐色。体長50cm前後。尾は2cm程度と短く,毛に隠れてほとんど見えない。体重3kg前後。前足に4本,後足に3本の指があり,後足のつめはひづめ状にとくによく発達して,走行に適したつくりになっている。ブラジル,ベネズエラなどに分布し,低湿場の密林から乾燥した草原まで,さまざまな環境にすむ。岩の下,木の根もとなどに穴を掘って巣穴とし,ふつう単独で暮らす。巣穴からは四方に,よく踏み固められた通路がのび,昼間,それらを通って採食地に出かける。食物は果実,芽,葉,茎,根など植物の水気の多い部分で,したがってときに農場を荒らす害獣となる。雌は年に2回,1産2子を生む。肉が美味で,狩猟の対象とされる。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報