アレグザンダー(Lloyd Chudley Alexander)(読み)あれぐざんだー(英語表記)Lloyd Chudley Alexander

  • 1924―2007

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アメリカの作家、児童文学作家。高校卒業後、一時ウェスト・チェスター州立教育大学に籍を置くが、1943年アメリカ陸軍に入隊、軍務でペンシルベニアのラファイエット・カレッジでフランス語とスペイン語を学び、後にウェールズに派遣され、第二次世界大戦後はパリに駐留中ソルボンヌ大学に学んだ。

 彼は大人の本の翻訳の仕事のほかに、大人向けの小説を10作以上書いているが、過去のさまざまな国を移動する黒猫のタイム・ファンタジー『時をかける猫』(1963)以来、子供の文学が真の自己を表現できる開放的、創造的な文学であることを自覚し、この作品では使わなかったが少年期から強くひかれていたウェールズの神話・古伝説集『マビノギオン』を素材にして、「プリデイン物語」5巻を発表した。シリーズを構成する『タランと角の王』(1964)、『タランと黒い魔法の釜』(1965)、『タランとリールの城』(1966)、『旅人タラン』(1967)、『タラン・新しき王者』(1968。翌1969年度のニューベリー賞受賞)5巻は、アメリカ的な叙事詩的ファンタジーの分野を切り開いた。神話的世界で英雄時代さながらの冒険の数々を経ながら成長する少年像に、作者の抱く人間の未来像が明瞭に表現されている。

 彼の特徴である人物描写の精確さと、自然で迫真性ある物語性は、『セバスチァンの大失敗』(1970。全米児童図書賞)、『人間になりたがった猫』(1973)、『木の中の魔法使い』(1975)など、独創的な着想をユーモアとペーソスと軽妙な風刺をこめて展開した作品を生んだ。彼の作品には魅力的な女性がよく登場するが、代表的な一人ベスパー・ホリーをヒロインとする『イリリアの冒険』(1986)、『エルドラドの冒険』(1987)、『ドラッケンベルグの冒険』(1988)、『ジェデラの冒険』(1989)、『フィラデルフィアの冒険』(1990)は、本格的冒険小説の醍醐味(だいごみ)を満喫させてくれる。さらに、彼は、1人の若者と、超自然力をそなえた少女と、ロバになった詩人が邪悪な預言者と戦う『アルカディアン』(1995)ほかで、叙事詩的ファンタジーを追い続けた。

[神宮輝夫]

『神宮輝夫訳『プリデイン物語1 タランと角の王』『プリデイン物語2 タランと黒い魔法の釜』『プリデイン物語3 タランとリールの城』『プリデイン物語4 旅人タラン』『プリデイン物語5 タラン・新しき王者』(1972、1973、1974、1976、1977・評論社)』『神宮輝夫訳『ユーモア作品集1 セバスチァンの大失敗』『ユーモア作品集2 人間になりたがった猫』『ユーモア作品集3 木の中の魔法使い』(1977・評論社)』『エバリン・ネス絵、神宮輝夫訳『プリデイン物語別巻1 (絵本)コルと白ぶた』『プリデイン物語別巻2 (絵本)フルダー・フラムとまことのたてごと』(1980・評論社)』『田村隆一訳『猫 ねこ ネコの物語』(1988・評論社)』『宮下嶺夫訳『ベスパー・ホリー物語1 イリリアの冒険』『ベスパー・ホリー物語2 エルドラドの冒険』『ベスパー・ホリー物語3 フィラデルフィアの冒険』(1994、1995・評論社)』『The Zena Sutherland Lectures 1983-1992 edited by Betsy Hearne(1993, Clarion Books, NewYork)』『Jaqueline Shachter WeissProfiles in Children's Literature(2001, The Scarecrow Press Inc., Lanham, Maryland and London)』

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