ペンシルベニア(読み)ぺんしるべにあ(英語表記)Pennsylvania

翻訳|Pennsylvania

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペンシルベニア」の意味・わかりやすい解説

ペンシルベニア
ぺんしるべにあ
Pennsylvania

アメリカ合衆国東部、大西洋岸の州。独立13州の一つ。面積11万7412平方キロメートル、人口は1228万1054(2000国勢調査速報値)で、全米第5位。州都ハリスバーグ。南をデラウェア州メリーランド州に、北をニューヨーク州に、東をニュー・ジャージー州に、西をウェスト・バージニア州とオハイオ州に接する。また、東境デラウェア川が形成し、中央部を南北にサスケハナ川が、西部はアレゲニー川とモノンガヒーラ川が合流してオハイオ川を形成し、北西端にエリー湖がある。地形的には、北西端部のエリー低地から南東部の海岸平野の間にアレゲニー高原があり、何本かの山地丘陵、谷が連続するアパラチア台地、ピードモント台地、さらにニュー・イングランド山脈が並行する。最高峰はデービス山(979メートル)。大陸性気候に属すが、地域により多少差がある。フィラデルフィアの平均気温は6月で24.5℃、1月で0.6℃、年降水量は約1000~1100ミリメートルである。アメリカ合衆国の歴史をリードしてきた同州は、独立13州のなかで地理的にも中央部に位置する。肥沃(ひよく)な土地と豊かな鉱物資源、さらに豊富な水力にも恵まれ、東のフィラデルフィア、西のピッツバーグを柱とした経済・工業・文化の中心地として発展した。工業では、19世紀に無煙炭、瀝青(れきせい)炭、鉄鉱など豊富な鉱物資源を利用して隆盛を極めた鉄鋼業がピッツバーグを中核に重要な地位を占め、銑鉄では全米の23%を生産し、線材、建築用鋼材などは全米第1位である。そのほか、機械、化学、食品、金属、衣料、皮革、ゴム、プラスチックなど多種工業の発達がみられる。また、フィラデルフィア、ピッツバーグ、エリーは同州の三大港都として知られる。ピードモント台地やエリー低地ではトウモロコシ、ジャガイモ、小麦、大麦干し草マッシュルームや、リンゴ、モモなどの果樹栽培が盛んで、北東部、南西部では酪農・畜産農家が多い。

 文化・教育面にも優れ、フィラデルフィア管弦楽団ピッツバーグ交響楽団といった世界的に有名な楽団を育て、フィラデルフィア美術館をもつ同市はまた美術の中心地でもある。教育関係では、ペンシルベニア州立大学、ペンシルベニア大学やピッツバーグ大学、カーネギー・メロン大学などそれぞれの特色を生かした大学が多い。州内には自然景観の美しさとともに多くの歴史の跡を残しており、ゲティスバーグ国立軍事公園、バリー・フォージ国立歴史公園やインディペンデンス・ホール、カーペンター・ホール、自由の鐘はあまりにも有名である。また、住民は人種的に多様で、それぞれの風俗・習慣が比較的残されており、とくに開拓時代の生活に現在も固執するアーミッシュをはじめ、ドイツのラインラント地方から移住したペンシルベニア・ダッチはよく知られる。

[作野和世]

歴史

17世紀初め、ヨーロッパ人がこの地に植民を始めたころは、デラウェア、サスケハナ、ショーニーといった先住民集団(アメリカ・インディアン)約1万5000人が居住していた。1664年イギリス領となり、クェーカー教徒ウィリアム・ペンが国王の特許状により82年植民地を開いた。ペンシルベニアとは「ペンの森」を意味する。ペンは、本国で宗教的迫害を受けていた人々を迎え入れ、先住民と友好協約を結び、「政府の形態」と「権利憲章」を定めるなど、積極的な植民地経営を行い、自ら「神聖な実験」とよんだ。

 18世紀に入るとドイツ人、スコットランド系アイルランド人の移民の波が西部に押し寄せ、農業が発達したが、土地をめぐるインディアンとの対立も深刻となり、1754年には戦争となった。18世紀後半、中心都市フィラデルフィアはアメリカの商業・貿易の中心地となり、独立革命時には大陸会議が開催され、1776年独立宣言の公布、87年連邦憲法会議もこの地で開かれ、1790年から1800年まで新国家アメリカの首都であった。独立時のペンシルベニアの人口は27万余と推定される。1794年西部農民が連邦政府の酒造課税に抗議し、「ウイスキー反乱」を起こし、19世紀初めに台頭をみるジェファソニアン・デモクラシー、ジャクソニアン・デモクラシーの前兆となった。1830年代にはクェーカーを中心に奴隷制廃止運動が進められた。19世紀後半にはピッツバーグを中心に製鉄業が発達、それとともに労働運動も活発となった。

[白井洋子]


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