日本大百科全書(ニッポニカ) 「エル・ドラド」の意味・わかりやすい解説
エル・ドラド
えるどらど
El Dorado
南アメリカにある伝説上の黄金郷。本来は「黄金を塗った男」の意味で、現在のコロンビアの首都ボゴタ北東にあるグアタビタ湖畔に居住していた先住民チブチャ人の首長(しゅちょう)をさした。金粉を全身に塗り込んだ首長は司祭を伴って湖に舟を出し、金銀、宝石を湖中に投げ、身を沈めると、金粉が広がって湖面が輝くという荘厳な儀式のようすが、スペイン人征服者の間に語り継がれた。これにより黄金郷伝説が広がり、そのもっとも有力な場所としてオリノコ、アマゾン両川源流の盆地説が生まれた。1531年スペイン人オルダスがオリノコ川の奥地で黄金郷のうわさを耳にしたのをはじめ、フェーデルマン(1537)や、ベナルカサル(1538)らが探査に乗り出した。なかでもヒメネス・デ・ケサダGonzalo Jiménez de Quesada(1495―1579)の大遠征隊が、コロンビア北岸に河口をもつマグダレナ川をさかのぼり、グアタビタ湖に到達したが、エル・ドラドを発見することはできなかった。しかし類似の秘境の存在を信じる者が後を絶たず、第二、第三の伝説を手掛りに黄金郷の探査熱は18世紀末まで続いた。
[寿里順平]