イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(読み)イオンサイクロトロンキョウメイシツリョウブンセキケイ

化学辞典 第2版 の解説

イオンサイクロトロン共鳴質量分析計
イオンサイクロトロンキョウメイシツリョウブンセキケイ
ion cyclotron resonance mass spectrometer

略称ICR.主としてイオン-分子反応の研究,および負イオン電子親和力を求めるための光電子脱離(photodetachment)の研究に使用される質量分析計原理磁場に垂直な面に高周波電場を印加し,特定の質量をもつイオンをサイクロトロン共鳴運動させる.イオンの検出は,ラジオ波の吸収量を測定することにより行う.J. Baldeschwielerらが1966年に製作発表した.原理図に示した装置を真空容器内に設置し,H(-z)方向に10 kG 程度の磁場をかける.電子衝撃などで生成したイオンは,小さい円軌道を描きながら,z方向に荷電されたイオントラップ電圧の電場により磁場方向への拡散をおさえられ,-y方向の電場により10 m s-1 程度のドリフト速度でゆっくりx方向に移動する.図の(b)部分でラジオ波を照射すると,イオンはラジオ波のエネルギーを吸収し,サイクロトロン共鳴しながらその円軌道を広げ,アルキメデス軌道を描く.磁場の強さを変化させ,ラジオ波の吸収を測定すると,

m/eH
に適合した磁場でm/eの質量電荷比のイオンの吸収が現れ,質量スペクトルが得られる.ここで,ωはラジオ波の周波数である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報