サイクロトロン共鳴(読み)サイクロトロンキョウメイ(その他表記)cyclotron resonance

デジタル大辞泉 「サイクロトロン共鳴」の意味・読み・例文・類語

サイクロトロン‐きょうめい【サイクロトロン共鳴】

cyclotron resonance金属半導体中の自由電子磁場中で等速円運動を行い、この運動の角振動数共鳴する電磁波を吸収する現象

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改訂新版 世界大百科事典 「サイクロトロン共鳴」の意味・わかりやすい解説

サイクロトロン共鳴 (サイクロトロンきょうめい)
cyclotron resonance

質量m,電荷q粒子は,磁束密度Bの中で角振動数ωcqB/mの円運動(サイクロトロン運動)を行うが,その振動数(円運動の周期逆数)と同じ振動数の電磁波を当てると共鳴してエネルギーを吸収する。この現象をサイクロトロン共鳴という。結晶中の電子や正孔の場合は,その有効質量が上述の式中のmに相当し,磁場の下にある試料に磁場と垂直な振動電場(マイクロ波,または長波長の赤外線)をかけると,その角振動数がちょうど上記のωcに等しいとき,粒子は共鳴的に加速され,その結果電磁波の吸収が観測される。そのときのωcBの値から有効質量を決定することができ,この有効質量の測定手段をサイクロトロン共鳴ということも多い。ただし,結晶中の電子は不純物や格子振動によってたえず散乱されており,次の散乱までの間に少なくとも数rad程度回転できる条件下にないと,はっきりした共鳴は見られない。有効質量が異方性を示す場合もあるが,そのときはωcの磁場方向による変化を調べて解析する。なお,金属では表皮効果のため高周波電場は試料内部に入れないので,上記の手段をそのままでは使えないが,表皮効果を逆に利用して類似の共鳴(アズベル=カナー効果)を得ることができる。
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化学辞典 第2版 「サイクロトロン共鳴」の解説

サイクロトロン共鳴
サイクロトロンキョウメイ
cyclotron resonance

磁束密度Bの磁場中の荷電粒子(質量m,電荷q)は,磁場に垂直な平面内で,一定角速度(角振動数)

旋回(サイクロトロン)運動を行う.ωをサイクロトロン振動数とよび,これに等しい角振動数の電磁波を共鳴吸収する現象.その際に加速されて旋回運動の半径(軌道半径)が増大する.荷電粒子が電子のとき電子サイクロトロン共鳴(electron cyclotron resonance,ECR),イオンのときイオンサイクロトロン共鳴(ion cyclotron resonance,ICR)とよぶ.ICRを利用した質量分析法がある.ECRは核融合炉プラズマ加熱に使われる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サイクロトロン共鳴」の意味・わかりやすい解説

サイクロトロン共鳴
サイクロトロンきょうめい
cyclotron resonance

荷電粒子は磁場中でサイクロトロン運動 (円運動) をするが,これと同じ振動数の電磁波を加えると共鳴して,電磁波のエネルギーを吸収する。この現象をサイクロトロン共鳴という。プラズマ中の電子やイオンの加熱に応用される。金属では電磁波が内部に侵入できないので,観測が困難であったが,1955年 M.アズベルと E.カーナーの指摘により,磁場を表面に平行に加え,マイクロ波電場をこれに垂直に加えることにより,表面の電子については観測された。金属におけるサイクロトロン共鳴をアズベル=カーナー効果という。サイクロトロン共鳴は金属や半導体のキャリアの有効質量フェルミ面の研究に応用されている。

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