イスラエル承認問題[ドイツ](読み)イスラエルしょうにんもんだい[ドイツ]

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

イスラエル承認問題[ドイツ]
イスラエルしょうにんもんだい[ドイツ]

1965年5月の西ドイツイスラエル国交樹立をめぐる外交問題。ドイツにはナチス時代のユダヤ人虐殺という過去があり,第2次世界大戦後,西ドイツが国際社会に復帰するためにはなんらかの形でイスラエルとの和解に達する必要があった。このため西ドイツは 52年9月,イスラエルに対し総額 34億 5000万マルクを 12~14年間で支払う補償協定を結び,また 60年にはイスラエルの求めにより武器供与の秘密協定にも応じた。この頃中東で孤立していたイスラエルを支持していたアメリカは,L.エアハルト首相時代を迎えた西ドイツと政治的にも経済的にも密接な関係を取戻し,アメリカのイスラエル政策に同調を求めていたが,イスラエルへの接近は敵対関係にあるアラブ諸国と西ドイツの関係を悪化させる恐れがあった。特に東ドイツの存在を否定していた西ドイツとしてはイスラエル承認がアラブ諸国の東ドイツ承認という反作用に出ることを警戒していた。 63年 10月成立したエアハルト内閣の外相 G.シュレーダーは首相とともに親米路線を掲げていたため,ついに西ドイツは 65年5月 12日イスラエル承認に踏切った。これによってアラブ連合などアラブ8ヵ国が西ドイツと国交を断絶したが,危惧していたアラブ諸国の東ドイツ承認という事態は起らなかった。

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