イラン核合意

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

イラン核合意

核兵器開発の疑惑をかけられたイランと米英仏独中ロが2015年7月に結んだ合意。イランが核開発を大幅に制限する見返りに、16年1月に米欧が金融制裁や原油取引制限などの制裁を緩和した。イランが核兵器に転用できる高濃縮ウラン兵器級プルトニウムを15年間は生産しないことや、ウランを濃縮する遠心分離機の大幅削減も盛り込まれ、緊張が緩和した。ただ、制限付きでも核能力は維持されたため、トランプ大統領が「致命的な欠陥がある」と非難してきた。

(2018-08-07 朝日新聞 朝刊 1外報)

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知恵蔵の解説

イラン核合意

イランの核兵器開発を大幅に制限する合意。イランと6カ国(米・英・仏・独・ロ・中)が2015年7月に結び、国連の安全保障理事会でも決議された。正式名称は「包括的共同行動計画(JCPOA)」。合意内容は、イランが濃縮ウランや遠心分離機を大幅に削減し、これを国際原子力機関(IAEA)が確認した後、見返りとしてイランへの経済制裁を段階的に解除するというもの。その後、IAEAの定期的な査察によって、イランが合意事項を順守していることが確認された。しかし、18年5月に米トランプ大統領が核合意からの離脱を発表したことで、状況は一変。トランプ政権は、核合意に弾道ミサイルの開発規制が盛り込まれていないこと、核開発制限に期限が設定されていることなどを離脱の理由に挙げている。他の当事国は合意継続を表明しているが、米国抜きでの実効性をどう確保していくかが今後の課題になっている(18年6月末時点)。
15年の「イラン核合意」までには、紆余曲折があった。イランは核兵器の製造・保有を禁じる核拡散防止条約(NPT)に1970年の発効時から加盟している。しかし、79年のイラン革命でイスラム共和制に移行して以来、欧米諸国とは距離を置き、独自の外交・安全保障政策を進めてきた。2002年に国内で核兵器への転用が疑われるウラン濃縮施設が確認され、欧米や周辺アラブ諸国から非難されたことで、イランは翌03年に濃縮活動の停止を発表。しかし、05年に保守強硬派のアフマディネジャドが大統領に就任すると、再びウラン濃縮を稼働させた。その後もアフマディネジャド政権は国連や欧米諸国による数度の制裁措置にも強硬姿勢を崩さなかったが、13年に穏健派のロウハニが大統領に就任すると一転。長期の経済制裁で国民生活が困窮するなか、ロウハニ政権は国際協調路線に舵(かじ)を切った。オバマ政権下の米国とも関係改善を図り、原油輸出や金融取引を対象にした制裁措置の解除を優先して、15年の「イラン核合意」へと至った。

(大迫秀樹 フリー編集者/2018年)

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