エネルギー均等分配の法則(読み)エネルギーキントウブンパイノホウソク

化学辞典 第2版 の解説

エネルギー均等分配の法則
エネルギーキントウブンパイノホウソク
law of equipartition of energy

1個の分子は各自由度ごとに(1/2)kTずつ,1 mol については(1/2)RTずつのエネルギーをもつという法則kボルツマン定数R気体定数Tは絶対温度自由度という用語はいろいろの意味に用いられるが,ここでは分子のエネルギーを構成する二乗項の数の意味である.二乗項とは位置または速度の2乗を含む項で,たとえば飛行のエネルギーについては,x方向の成分について(1/2)mvx2(mは分子の質量vは速度),二原子分子x軸のまわりの回転エネルギーは(1/2)Iω2(I慣性能率,ωは角速度)などである.振動エネルギーについては1振動様式について位置に関する二乗項(ポテンシャルエネルギー)と速度に関する二乗項(運動エネルギー)の二つからなる.したがって,1振動様式を2自由度に数える.この法則によれば,単原子分子のもつエネルギーは3方向成分の飛行エネルギーのみとなり,モル熱は(3/2)RTモル熱容量

(3/2)R ≈ 12.5 J K-1 mol-1
となり,後者は温度に無関係となる.これは実測値とよく一致する.二原子分子では上述の飛行エネルギーに2軸のまわりの回転エネルギーが加わるから,モル熱は(5/2)RT,モル熱容量は

(5/2)R ≈ 21 J K-1 mol-1
となるはずである.多くの二原子分子(H2,N2,O2,CO,HCl,NO,HBrなど)の常温付近のモル熱容量はこれに近い値を示す.ただし,Cl2 ではすでにこの温度で振動エネルギーが一部加わるため,これより大きい値を示す.二原子分子の振動については,この法則によれば,さらにRが加わり,モル熱容量は合わせて

(7/2)R ≈ 29 J K-1 mol-1
になるはずで,実際,高温ではこの値に接近する.多原子分子についてはこの法則の単純な適用はできない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

法則の辞典 の解説

エネルギー均等分配の法則【law of equipartition of energy】

気体分子1個は,各自由度について(1/2)kTのエネルギー(k はボルツマン定数)を保持しているという法則.1モル当たりでは(1/2)RTとなる.単原子分子であればモル熱容量は(3/2)RTとなるが,二原子分子なら(5/2)RT,多原子分子ならば3RT となるはずであるが,単原子分子や二原子分子では実測値とかなり一致するものの,多原子分子では他の要因が入ってくるため,必ずしも一致しない.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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