日本大百科全書(ニッポニカ) 「カイロウドウケツ」の意味・わかりやすい解説
カイロウドウケツ
かいろうどうけつ / 偕老同穴
Venus's flower basket
海綿動物門六放海綿綱六放星目カイロウドウケツ科に属する海産動物の総称。普通にカイロウドウケツといえばユープレクテラ属Euplectellaの種類をさす。この類は、ケイ素質の長い骨片が規則正しく組み合わさって円筒状の籠(かご)形となるが、英名はそれに由来する「ビーナスの花籠」の意味である。日本近海には、ヤマトカイロウドウケツEuplectella imperialis、マーシャルカイロウドウケツE. marshalli、オーエンカイロウドウケツE. oweniの3種が知られている。大きさは種類によって異なるが、ヤマトカイロウドウケツがもっとも大きくて約80センチメートル、ほかの2種は20~30センチメートルである。この類の円筒状になった内部は胃腔(いこう)とよばれ、この中にはドウケツエビとよばれる体長2~3センチメートルのエビが共生する。ドウケツエビも数種類が知られており、エビの種類によって共生するカイロウドウケツが異なっている。このエビは、幼生時代にカイロウドウケツの胃腔に入り込み、成長しても終生そこから外へ出ることはない。普通、雌雄1対がいっしょに生活するので、夫婦が末永く仲良く暮らす中国の故事に例えられ、「偕老同穴」という名がこのエビにつけられた。しかし、いつしか名前が逆になって海綿のほうをさすようになった。
カイロウドウケツ類を含め六放海綿類はすべて深海産で、100メートル以浅には生息しない。日本では相模(さがみ)湾に多産し、外国ではフィリピン近海に多産する。肉質部を薬品で除去すると、骨片の組織がガラス細工のように美しくみえるので装飾用とされる。
[星野孝治]