日本大百科全書(ニッポニカ) 「カトビーツェ」の意味・わかりやすい解説
カトビーツェ
かとびーつぇ
Katowice
ポーランド南部、シロンスク地方シロンスク県の県都。人口34万0539(2000)。クラクフの西北西72キロメートルにあり、上シロンスク工業地帯の中核をなす重工業都市で、ポーランド最大の工業都市である。チェコ国境にも近く、オドラ川とビスワ川の上流の東西40キロメートル、南北15キロメートルのベルト状の地域に、グリビーツェ、ザブジェ、ルーダ・シロンスカ、ビトム、ソスノビエツなど十数の工業都市が連なる都市工業アグロメレーション(集積地域)をなす。道路、鉄道などの社会資本もよく整備され、シロンスク炭田はヨーロッパ有数の埋蔵量をもつ良質な炭田である。カトビーツェを中心とする地域は同国の石炭生産の大部分を占め、ほかに亜鉛、鉛を産し、コークス、発電、鉄鋼、鋼管、乗用車を生産してきた。カトビーツェ製鉄所がドンブロバ・グルニチャに建設され、重要性が高まったが、1970年代以降は、工業の過集積から公害、環境問題が深刻となった。市は公害対策と環境保護を重視し、そのために1990~95年に予算の5%を投入して効果をあげた。教育・文化・金融産業にも力を入れている。
集落の形成は16世紀であるが、大都市に成長したのは19世紀以降である。1865年に市制が敷かれ、プロイセン領オペルン地方の中心都市となった。1921年にポーランド領となったが、第二次世界大戦中はドイツに占領された。
[山本 茂]