カブトゴケ(その他表記)Lobaria

改訂新版 世界大百科事典 「カブトゴケ」の意味・わかりやすい解説

カブトゴケ
Lobaria

山地樹皮や岩上に生えるヨロイゴケ科の大型葉状地衣。盃点や偽盃点はないが,下面にトメンタがある。共生藻は緑藻またはラン藻。日本産は21種。日本各地に多いヘラガタカブトゴケL.spathulata(Inum.)Yoshim.は表が緑色で,地衣体は革質,直径30cm以上になる。裂片は不規則に分枝し,幅1~2cm,先端は裁断形,表には網目状の凹凸があり,扁平な小裂片を多数生じる。裏は淡褐色で,表に対応する凹凸があり,全体に淡褐色の短いトメンタをつける。子器は表面に生じ,皿形,直径約2mm,胞子無色紡錘形で4室。共生藻は緑藻,髄は白色。近縁種に,円筒形の裂芽をもち,共生藻としてラン藻を含むチヂレカブトゴケモドキL.retigera(Bory)Trev.等がある。地衣体表面の様子が肺臓に似ており,ヨーロッパでは昔,結核の薬として利用したのでlung lichenの英名がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カブトゴケ」の意味・わかりやすい解説

カブトゴケ
かぶとごけ

地衣類ヨロイゴケ科のカブトゴケ属の総称。日本には約20種が知られている。地衣体は平らな葉状体で、不規則に二又状に分かれ、内部の共生藻には緑藻の場合と藍藻(らんそう)の場合とがある。子器は柄がなく、地衣体の先につき、杯(さかずき)状で、表面は褐色になる。地衣体には粉芽も裂芽もないことが多い。山地の樹幹や根元によく生え、ときに林の中の腐植土上にコケ類とともに生育する。

 代表的な種としてナメラカブトゴケLobaria orientalis (Asah.) Yoshim.があり、ブナウラジロモミなどの樹幹に着生する。地衣体は径20センチメートルくらいになり、集合して大きな広がりをもつこともまれではない。形は緩く二又状に分かれ、表面が湿っていると鮮緑色、乾くと黄褐色となり、盛り上がったり、くぼんだりして、やや網目状の模様をもつ。裏側は淡褐色で、溝目状となる。共生藻は緑藻である。エビラゴケL. discolor (Bory) Hueも、各種の樹皮に生える葉状の地衣体で、径10センチメートル前後となる。地衣体の表面は滑らかでつやがあるが、網目模様はない。裏側は淡褐色で、網目状模様はもたない。

[佐藤正己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カブトゴケ」の意味・わかりやすい解説

カブトゴケ(兜苔)
カブトゴケ
Lobaria pulmonaria

樹皮の上に生じる葉状地衣。体は葉状で多少分岐し,長さ 12~18cmに及ぶ。一端で軽く付着している。分岐片は鹿の角のような形をしている。葉状体の表面には網目状の著しい皺がある。湿っているときは暗褐色を呈し柔軟であるが,乾くと緑褐色で紙状となり折れやすい。明瞭な盤子器を生じる。この地衣の体内の藻類は緑藻またはネンジュモ科に属する藍藻である。

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