日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンバ」の意味・わかりやすい解説
カンバ
かんば
Kamba
ケニアに住むバントゥー系の民族。彼ら自身、また周辺の民族は、彼らを「カンバの人々」という意味の「アカンバ」Akambaとよぶ。人口は推定約291万(1995)。居住地は広大で、ほぼ九州の1.2倍の広さに相当し、行政的にはマチャコス、マクェニ、キトゥイ、ムインギの四つの地区に分かれている。
生業は農耕が主体であるが、地域によってはウシ、ヤギ、ヒツジなどの牧畜にも従事している。かつては狩猟も行われ、なかでも北部カンバの人々はゾウを射て、その象牙(ぞうげ)を海岸地方に運び、布地や真鍮(しんちゅう)と交換するなど、交易に従事した。最近ではビルの建設、ガードマンなどの仕事を求めて、都市での労働が増加しつつある。
カンバは25ほどの父系クラン(氏族)に分かれ、そのおのおのがさらにいくつかのサブ・クランに分かれている。同じクランの成員が参加して開かれるクラン会議は、カンバの法、道徳、政治、裁判、紛争処理、宗教および儀礼などの領域において重要な役割を担っている。伝統的には一夫多妻の婚姻制度をもち、家族は3、4世代にまたがる父系出自の拡大家族である。家族の成員はかつては大きな家屋群を形成して居住していたが、現在では比較的小規模な単位に分散している。宗教は死者についての信仰が重要であり、死者への供儀、祈願が頻繁になされている。このほか、さまざまな神秘力に関する信仰も存在する。最近では、キリスト教徒もしだいに増加しつつある。
[上田 将]