キンギョ(読み)きんぎょ(英語表記)goldfish

翻訳|goldfish

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

キンギョ
きんぎょ / 金魚
goldfish
[学]Carassius auratus

硬骨魚綱コイ目コイ科に属する淡水魚。観賞魚として著名な魚。形態学的にフナに類似し、染色体も同数・同型で、また同系交配によりフナに類似した個体が出現することからフナの変種とされる。学名は「黄金色の魚」の意味で、原産地の中国では1世紀ごろから金魚(チンユウイ)とよばれている。韓国でも金魚(キムポン)である。[鈴木 亮]

愛玩の歴史

揚子江(ようすこう)下流の浙江(せっこう)省、江西(こうせい)省付近が原産地といわれ、晋(しん)代(265~450)には、すでに赤いフナ(ヒブナ)が存在したことが古い文献に記されている。本格的に飼育されるようになったのは、宋(そう)朝のころからである。日本には、室町時代の1502年(文亀2)に明(みん)から渡来したのが最初である。当時は貴族や豪商などの上層階級の間で愛玩(あいがん)飼育されていたが、江戸中期になってからは、一般市民の間にも流行し、夏の金魚売りの呼び声は江戸風物の一つであった。飼育の長い歴史の過程で、突然変異によって現れたさまざまの形のものが選抜され、さらに交雑によって多くの品種が出現した。[鈴木 亮]

形態

キンギョは、フナと共通する点が多いが、品種によって外形や色彩が著しく異なっている。一般にフナよりも体高が高く、体幅が広い。頭部の表皮が肥厚したこぶ状の肉瘤(にくりゅう)があるもの、目が突出したもの、尾びれがさまざまの形に開いているもの、背びれを欠くものなどがある。体色は、赤、白、黄赤色のものが多いが、黒色、銀色、茶色のものや、黒斑(こくはん)をもつものもある。色の違いは、皮膚にある色素細胞や虹胞(こうほう)によって決まる。赤色の部分には赤色細胞、黄色細胞が多い。黒色細胞が表皮に多数存在すると黒色を帯び、真皮に少量存在すると青色を帯びる。色素細胞を欠いた場合には透き通り、色素細胞に虹胞が加わると光沢が出て、黄赤色のものは黄金色に、透明のものは銀白色となる。虹胞を欠く鱗(うろこ)を透明鱗(りん)とよび、虹胞のある普通鱗と透明鱗の混在しているものをモザイク鱗という。しかし、孵化(ふか)して2か月ぐらいの間は、いずれの品種の稚魚も黒色素細胞とわずかの黄色素細胞しかなく、フナの稚魚と同じく暗緑色。その後、急に体色が変化し、さまざまの色が出現。この現象を褪色(たいしょく)とよび、その時期は飼育環境などの影響によって左右される。雌雄の形態的な違いは顕著でないが、産卵期が近づくと、一般に雌の腹部は雄よりも膨らみ、雄のえらぶたなどに追星(おいぼし)とよばれる白色の小突起が現れる。また生殖孔(こう)が、雄では小さく長楕円(ちょうだえん)形で、雌では円形に近く、やや突出している。[鈴木 亮]

品種

現在、日本でみられる品種は、明治年代までに輸入された在来種とよばれるもの、日本で選抜や交雑によってつくられたもの、第二次世界大戦後に中国から輸入された中国金魚と、アメリカから輸入された種類に分けられる。[鈴木 亮]
在来種
(1)ワキン(和金) 体は細長く、ひれは短くてフナに似ている。体色は赤、白あるいはその両色が斑紋状のものが多い。尾びれはフナ尾形のほか、三つあるいは四つに分かれたものがある。諸品種のうちではもっとも産額が多く、飼育しやすい。
(2)リュウキン(琉金) 体は丸くて短く、各ひれは長い。尾びれは三つ尾と四つ尾があり、キンギョの代表品種の一つである。
(3)デメキン(出目金) 両眼が左右に突出して大きい。尾びれは三つ尾あるいは四つ尾。体色が黒いものをクロデメキン、赤いものをアカデメキン、赤・白・黒の3色あるものをサンショクデメキンとよぶ。
(4)チョウテンガン(頂天眼) 両眼が上方を向いて突出し、背びれを欠く。体はデメキンよりもやや細長い。[鈴木 亮]
日本でつくられた品種
(1)ランチュウ(蘭鋳) 体は丸形で、背びれがなく、そのほかのひれは短く、頭部にこぶのあるのが特徴。イトミミズなどの動物性食物を多く食べるほどこぶがよく発達する。
(2)オランダシシガシラ(和蘭獅子頭) 体は短いが、リュウキンのように各ひれが長い。尾びれは三つ尾または四つ尾。頭部にこぶができる。
(3)ジキン(地金) 体形はワキンに似ているが、四つ尾の尾びれが体軸に対して直角に開き、後方からみるとX状をしているのが特徴で、これを孔雀(くじゃく)尾とよぶ。名古屋を中心とした愛知県の名産で六鱗(ろくりん)ともよばれるが、この名は、体色が変化する時期に、ひれやえらぶたの一部および吻部(ふんぶ)以外の表皮を人が爪(つめ)などではぎ取って体色を変化させることに由来している。つまり、はぎ取ったところは白色になり、残した部分の6か所だけは赤いという意味である。
(4)トサキン(土佐金) 体形はリュウキンに似ているが、尾びれが左右に著しく開き、先端部が前方に反転している。高知県を中心に発達した品種で、少数が飼育保存されている。
(5)キャリコcalico 体形はリュウキンに似るが、赤、白、青、紫、黄、黒色の斑紋が混在している。サンショクデメキンとリュウキンの交雑によって作出された。
(6)シュブンキン(朱文錦) 尾びれはフナ尾で、各ひれは長く、体色はサンショクデメキンと同様。サンショクデメキンとフナの交雑によって作出された品種。
(7)その他 アズマニシキ(東錦)、シュウキン(秋錦)、ワトウナイ(和藤内)も日本で作出された品種であるが、生産尾数は少ない。[鈴木 亮]
中国金魚
(1)スイホウガン(水泡眼) 両眼が背方を向き、下側にリンパ液の入った水泡がある。
(2)チュンシュリンユウイ(珍珠鱗魚) 体形はリュウキンに似ているが、鱗の表面に石灰質が沈着して盛り上がっている。
(3)その他 鼻孔周辺部の肉質が突起して房状になったシュウチュウイ(絨球魚)、えらぶたが外側へ反転しているファンサイ(翻鰓)、体色が褐色のツェユイ(赭魚)などの品種もある。[鈴木 亮]
アメリカからの輸入種
コメットcometはワキンに似ているが、彗星(すいせい)cometを思わすように長いフナ尾をもつ。[鈴木 亮]

習性

温水性で、適水温度は25℃ぐらいで、生存範囲は0~35℃。雑食性であるが、イトミミズ、アカムシなどの小動物をとくに好む。人になれやすく、環境がよければ体長25センチメートルにもなり、20年以上も生存するものがあるという。塩分に対しては、1.5%ぐらいまでなら死ぬことはない。水中の溶存酸素量が水1リットル中に2cc以下(普通は6~7cc)になると、水面で口をぱくぱくする。これを「鼻上げ」といい、長く続くと死亡する。普通は生後2年で親になり、自然に近い状態では、5、6月ごろ、降雨後の翌朝に産卵することが多い。まれに9、10月に産卵する場合もある。また、水温を人工的に調節すると、年中望む時期に産卵させることができる。卵は、20℃では3、4日で孵化し、さらに3日ぐらいたつとミジンコなどの小動物を食べるようになる。[鈴木 亮]

愛玩飼育

10リットルぐらいの水槽でも飼育できるが、酸素欠乏による鼻上げをさせないことがもっともたいせつである。これを防ぐには、収容尾数を減らすか、またはポンプで送気し、水中で空気を分散させるか、循環濾過(ろか)装置をつけることが必要である。餌はイトミミズなどの生き餌(え)が最適であるが、市販の養魚用配合飼料でもよい。与える量は水温によって加減し、25℃前後のときにもっとも多く必要で、この水温のときに欠食させるとやせる。10℃以下、30℃以上のときや、鼻上げをしているときには与えない。また、糞(ふん)が紐(ひも)状に長く続いたり、配合飼料が原形に近い形で排出される場合は、餌(えさ)の多すぎを意味する。30℃以上の場合は別として、水温が高いほど食欲が盛んで、よく成長するが、排出物が多くなり、水が汚れ、鼻上げの原因になりやすいので注意しなければならない。水温が急に低下すると、死亡したり病気にかかりやすい。また、水道水の中には塩素が含まれていることが多く、そのまま使用するのは危険である。水換えの際には、くんで数時間ぐらいおき、塩素ガスを発散させてから水を使用することがたいせつである。ランチュウやリュウキンなど一般に高級なものは、体形の関係で鼻上げ行動が長時間続けられないので、水槽の水を濾過させる装置をつけて、死なせないように管理する必要がある。[鈴木 亮]

養殖

日本では奈良県大和郡山(やまとこおりやま)市、愛知県弥富(やとみ)地方および埼玉県下の順に産額が多い。養殖用の稚魚を生産するには、広さが2~3平方メートル、深さ30センチメートルぐらいのコンクリート池を用いる。池を掃除してからきれいな水を張り、卵を産み付けさせるための魚巣(ぎょす)(キンギョモなど)を水面近くに浮かべ、ここに成熟した雌雄の親を放す。午前中にこの作業を終えておけば翌朝ほとんど産卵するが、午後に延びると産卵が1日遅れる。卵はこの池で孵化させるので、産卵後は親を別の池に移し、卵を食べるのを防ぐ。一方、産卵予定日の3、4日前に、水田を一部改造した程度の養魚池に、石灰や鶏糞などの肥料を散布し、水深を30センチメートルぐらいにしておく。孵化した稚魚が餌を食べ始めるころには、この養魚池に、ワムシやミジンコなどの小動物や植物プランクトン(アオコなど)など、稚魚の餌が発生する。孵化後3日目の稚魚をこの池に放せば、それらの餌料を食べて成長する。20日間ぐらいたつと、池中の餌料(じりょう)は食べ尽くされるので、配合飼料か自家製の練り餌を与えて本格的に養成する。養魚池は通常、止水状態にしておくが、これはアオコを適量に発生させることを目的とする。養魚池に発生したアオコは、酸素を補給するだけでなく、魚が排出する窒素やリンを吸収する。また、キンギョがアオコを食べると、体色が濃くなる。稚魚放養後、40~50日目に取り上げて、不正形の個体を選別して除去し、各品種の特徴を備えているものだけを残して飼育を続ける。[鈴木 亮]

病気

おもな病気は、原生動物のイクチオフチリアスの寄生による白点病と、甲殻類のイカリムシおよびチョウ(ウオジラミ)による寄生虫病である。白点病は、体表面に白い粉を振りかけたようになる病気で、温度変化の激しい時期、とくに早春と晩秋に発生しやすい。水槽飼育の場合は、水温を28℃ぐらいに上昇させ、食塩を1%の濃度になるように溶かすとよい。養魚池で発生した場合には、水位をあげ、温度の変化を防止するとともに、食塩を1%の濃度になるように池に散布する。イカリムシは1センチメートルぐらいの紐状の動物で、錨(いかり)状をした頭部をキンギョの鱗の間から筋肉内に差し込んで体液を吸う。チョウは直径2~3ミリメートルぐらいで円形状をしており、肉眼的にはシラミに似ている。体表面に吸着して血液を吸うが、その際に毒液を注入する。これが寄生すると、キンギョは水面上に跳ね上がったり、水底に体をこすりつける。これらの寄生虫を駆除する薬品には、水産用マゾテンが特効薬で、200万分の1の濃度になるように養魚池に散布することが有効な方法とされているが、この薬剤は毒性が強いので、散布後は池の水を直接河川などに放流しないようにする必要がある。[鈴木 亮]
『松井佳一著『日本の金魚』(1956・遺伝学普及会) ▽松井佳一著『金魚と錦鯉』(1971・金園社) ▽中村中六著『金魚の飼い方』第4版(1971・泰文館) ▽渡辺国夫著『金魚の飼い方と病気』(1977・永岡書店) ▽白石光著『カラー図鑑 金魚――選び方・飼い方・病気』(2003・西東社) ▽木村義志著『金魚がウチにやってきた』(岩波アクティブ新書)』

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