改訂新版 世界大百科事典 「イトミミズ」の意味・わかりやすい解説
イトミミズ
Tubifex hattai
貧毛綱イトミミズ科の環形動物。日本全国に分布する。下水溝などの泥の中に群生しているので,泥の表面が桃色になるためモモホオズキと呼ばれるほか,ボッタ,イトメなどとも呼ばれる。体は糸状で長さ5~10cm,体節数85~100。成熟した個体には第11,12体節に環帯が現れる。背側に長い毛状剛毛をもつことがこの種の大きな特徴であって,他の近似種には毛状剛毛がない。雄性孔は第11体節の腹面に1対ある。体に刺激を与えるとらせん形に巻く性質がある。群れの中を探すと卵包を見いだすことがある。卵包の中からは数匹の小さいミミズが孵化(ふか)する。観賞魚の餌として売られているが,これらの中にはイトミミズ科に属する数種類のものが混在している。
イトミミズ科TubificidaeにはユリミミズLimnodrilus socialis,シロイトミミズRhizodrilus limosus,エラミミズBranchiura sowerbyiなどが含まれ,細長い外形はよく似ている。しかし,ユリミミズは雄性孔が第11体節の腹面左右に1対あるのに対し,シロイトミミズは第11体節の腹面正中線上に1個あることで区別できる。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報