改訂新版 世界大百科事典 「クレアチンリン(燐)酸」の意味・わかりやすい解説
クレアチンリン(燐)酸 (クレアチンりんさん)
creatine phosphate
ホスホクレアチンとも呼ばれ,ホスファゲンの一つである。1920年代にエグルトンP.Eggletonらがネコ筋から発見した。脊椎動物の筋に広く分布しているが,無脊椎動物でもウニ類に見られ,個体発生においてアルギニンリン酸と置き換わる。無色,水溶性。ATPと並んで高エネルギーリン酸エステルとして知られ,筋肉の収縮運動のエネルギー源として重要である(高エネルギー結合)。酸性では不安定で加水分解されてリン酸を遊離するが,中性では比較的安定である。クレアチンホスホキナーゼの作用で,ATP⇄ADPの転換に際し,可逆的にエネルギーを供給する。
この反応はローマン反応と呼ばれる。生体内ではこの反応によってクレアチンとATPからクレアチンリン酸が合成される。カルシウム塩は吸湿性の結晶で水によく溶けるが,アルコールにはほとんど溶けない。
執筆者:徳重 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報