クロストリジウム(読み)くろすとりじうむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロストリジウム」の意味・わかりやすい解説

クロストリジウム
くろすとりじうむ
[学] Clostridium

細菌類、真正菌目バチルス科に属する偏性(絶対的)嫌気性の細菌。グラム陽性で、胞子芽胞)を形成する。自然界、とくに土壌中に広く分布し、あるものは腸内細菌叢(そう)の仲間である。19世紀の中ごろパスツールによって発見され、その後、この属の細菌が酪酸発酵を行うことが実証された。この属の細菌による重要な疾病には破傷風C. tetaniによる)とガス壊疽(えそ)(C. perfringensと他の化膿(かのう)菌との混合感染)があり、食中毒にはボツリヌス食中毒C. botulinumによる)とウェルシュ菌食中毒C. perfringensによる)がある。これらは、いずれも菌体外毒素(有毒タンパク質)が生産されるためである。この属の菌は分子状酸素に対して感受性が高く、栄養細胞は空気に接触すると瞬間的に死滅するが、胞子は空気に対して感受性はない。土壌中や水系中ではタンパク質や繊維素の分解者として重要な生物であり、分解されたものは多種のガスや分解生成物となって、他の生物に利用される。なお、一部の菌は空中窒素固定菌である。

[曽根田正己]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロストリジウム」の意味・わかりやすい解説

クロストリジウム
Clostridium

真正細菌類の1属。土壌中またはヒトそのほかの動物の腸内に最も普通に生息する。 100近くの種がある。体は孤立した桿状であるが,その胞子を形成する際には,ふくらみが起って,紡錘形,撥形 (ばちがた) ,棍棒形,船形などとなる。一般には体の周囲に繊毛を生じて,それにより運動する。グラム反応は陽性。強く嫌気性のもの,軽く嫌気性のものなどがある。なお,この種のうちには空気中の遊離窒素を固定するもの C. pasteurianumC. butyricumがあり,それらの存在は土壌,特に耕作地の土壌の肥沃性に深い関係があるとも考えられた。また耐熱性の強いもの (50~60℃に生活) C. thermocellum,毒素を体外に出すボツリヌス菌 C. botulinumなどもある。

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世界大百科事典(旧版)内のクロストリジウムの言及

【壊疽】より

…古くからの用語。起炎菌としては嫌気性菌のクロストリジウムが最も多い。糖分を融解してガスを発生する場合には,ガス壊疽ということがある。…

【ガス壊疽】より

…クロストリジウム属clostridiumに属する嫌気性菌が傷口から侵入して起こる,広範な筋肉の感染症。原因菌は,ウェルシュ菌C.welchii,ノビ菌C.novyi,セプチクス菌C.septicumなど6種類あり,数種類の混合感染によるものが多い。…

【杆菌】より

…杆菌には,細菌が連鎖状に連なった連鎖杆菌や,コリネ型菌のように,複数の細菌がくっついてV・Y・L字形や平行状の配列をとるものがいる。杆菌には胞子を形成するものとそうでないものがあり,胞子を形成する杆菌には,好気性ないし通性嫌気性であるバチルスBacillusと,嫌気性菌であるクロストリジウムClostridiumとがある。細菌【川口 啓明】。…

【嫌気性菌】より

…酸素を嫌う程度は菌種によって異なり,遊離酸素のほとんどないところでのみ発育できる菌を偏性嫌気性菌と呼び,酸素がかなりあっても発育できる菌を通性嫌気性菌と呼ぶ。偏性嫌気性菌は,クロストリジウム,メタン細菌,硫酸塩還元細菌,大部分の光合成細菌などである。クロストリジウムは胞子をもつ嫌気性杆菌で,破傷風菌やボツリヌス菌などのように強力な毒素を産生する菌が多い。…

※「クロストリジウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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