六訂版 家庭医学大全科 「ウエルシュ菌食中毒」の解説
ウエルシュ菌食中毒
ウエルシュきんしょくちゅうどく
Clostridium perfringens food poisoning
(食中毒)
どんな食中毒か
ウエルシュ菌に汚染された原材料(食肉、魚介類、野菜、添加物・香辛料など)を用いて食品を製造・調理し、さらに不適当な取り扱いや保存をしたために、本菌が増殖、また
ウエルシュ菌は、酸素の少ない
本菌は4種類の毒素産生性により、A、B、C、DおよびE型の5つに分けられています。このうち食中毒を起こすウエルシュ菌は、エンテロトキシン(下痢原性毒素)を産生するA型菌がほとんどです。なお、C、D型菌の一部にもエンテロトキシンを産生するものがあります。
症状の現れ方
多数のウエルシュ菌に汚染された食品をヒトが食べた場合に、腸管内(生体内)で菌が増殖し、芽胞を形成する時にエンテロトキシンを産生します。この毒素の作用により下痢・腹痛などを起こす代表的な
本食中毒の症状は、原因食品を摂取してから6~18時間後(多くは12時間以内)に現れます。最初、腹部の
ウエルシュ菌食中毒と同じようなメカニズムにより発生する、また患者の症状も似ている食中毒としてセレウス菌「下痢型」食中毒があります。この両者を症状から区別することは困難です。
検査と診断・治療
患者の便や原因食品(または食品原材料)などから多数(1gあたりの菌数が百万~1億個)のウエルシュ菌が検出されること、さらにこれらの菌が同一の性状・血清型を示し、エンテロトキシンを産生することにより、ウエルシュ菌食中毒として診断されます。また、患者さんの便から直接エンテロトキシンを証明することも有効な診断法です。なお、類似の食中毒を起こすセレウス菌は、
本症は細菌性食中毒のなかでも軽症であり、特別な治療を行わなくても一両日中に回復します。
予防のために
ウエルシュ菌は自然環境、ヒトおよび動物の腸管などに広く分布し、食肉、魚介類など食品原材料中に比較的高率に汚染されており、加熱調理した食品はすみやかに摂食するか、冷却することが大切です。冷却する場合はすばやく20℃以下にします。また、この菌は15~50℃で発育を示し、ほかの食中毒菌に比べ42~45℃でもよく発育するので、保存は10℃以下または50℃以上で行う必要があります。さらに、保存されていた食品は温め直しなどの再加熱(75℃で15分以上)をして食べるようにすることも大切です。
品川 邦汎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報