日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガス壊疽」の意味・わかりやすい解説
ガス壊疽
がすえそ
ガス壊疽菌の感染によっておこる創傷感染症の一つ。ガス壊疽菌というのは嫌気性グラム陽性桿菌(かんきん)群の総称で、クロストリジウム属がもっとも多く、なかでも主役はウェルシュ菌である。ガス壊疽は、これらの混合感染による症候群である。土壌で汚染された開放性損傷によって発症しやすく、感染後6~7時間で感染創の周囲が蜂巣織炎(ほうそうしきえん)状に赤く腫(は)れ、筋肉の壊死(えし)を招いてガス発生を伴うため、病気の進行とともに膨れ上がり、全身状態が著しく悪化する。第一次世界大戦中の戦傷者に多発し、多数の死者を出して注目された。平和時にはまれである。かつては四肢の高位切断が行われたが、近年は化学療法や高圧酸素療法の効果が認められている。
[柳下徳雄]