日本大百科全書(ニッポニカ) 「酪酸発酵」の意味・わかりやすい解説
酪酸発酵
らくさんはっこう
酪酸菌の作用によって炭水化物から酪酸を生成し、同時に炭酸ガスと水素ガスを生ずる発酵をいう。その反応は次式で表される。
酪酸発酵は絶対嫌気性菌の酪酸菌(クロストリジウムClostridium butyricum)などによって行われるが、細菌の種類や反応条件によってはアセトン、ブタノール、エタノール(エチルアルコール)、乳酸なども生ずる。
酪酸発酵の基本経路は、炭水化物からピルビン酸まではエムデン‐マイヤーホーフ‐パルナス経路で進み、その後酢酸を経て酪酸を生ずると考えられている。また、発酵容器内の一酸化炭素分圧の増大や、青酸カリKCNなどの毒物で酪酸発酵の過程を阻害すると、乳酸が生じ、乳酸発酵へ切り替わることが知られている。
[伊藤菁莪]