改訂新版 世界大百科事典 「スコットランド学派」の意味・わかりやすい解説
スコットランド学派 (スコットランドがくは)
正式にはスコットランド常識哲学学派Scottish school of common senseという。〈存在とは知覚されることである〉とのバークリーによる物質否定の論証や,ヒュームによる因果観念の否定という懐疑的結論によって哲学一般の基盤,とりわけ既成の教会の教義に及ぼすこの種の帰結の脅威を感じたT.リードは,デカルトやロック以来の〈観念〉を軸とする認識批判の方法をしりぞけた。彼はそれゆえに意識的な推論過程に先行する本能的な判断の価値に注目して常識を擁護した。彼を受けていっそう卑俗な日常的常識に訴えたビーティJames Beattie,人間の心理過程を重視したスチュアートDugald Stewartらスコットランドの哲学者がこの学派に含まれる。カントを独断のまどろみから覚醒させたヒュームの鋭利な論証とは逆に,その微温的な折衷的理論はヨーロッパ大陸では高く評価されなかったが,今日ではハチソン,ヒューム,A.スミスらを含め広くスコットランド啓蒙主義として見直されている。
執筆者:中野 好之
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