出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
T・リード、J・ビーティ、D・スチュアート、J・O・オズワルドらを代表とし、スコットランドに現れた18世紀イギリス哲学の一傾向。スコットランド常識学派ともいわれ、外界存在や因果律の確実性に対するヒュームの懐疑的帰結を批判した。ヒュームやその先駆、ロック、バークリーの論法は正しいが、彼らがデカルトから継承した、知識の対象と要素を心的で単純な観念とする基本前提は誤りで、実在や因果律などの知識の確実性は、人々の「常識の原理」により保証されると彼らは主張する。
その説は、一方ではヒュームに極まったイギリス古典経験論の否定的結末に対して、伝統的道徳や宗教の弁護を目的とし、当時の聖職者の護教の拠点ともなった。この保守性に加えて、常識の原理などを中心とする彼らの積極的主張にはあいまいで古拙(こせつ)な点がある。だが他方でそれは、イギリス古典経験論の独断的前提への適切な批判を含み、現代での一段と洗練された常識擁護の先駆としての意義をもつ。
[杖下隆英]