日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハチソン」の意味・わかりやすい解説
ハチソン
はちそん
Francis Hutcheson
(1694―1746)
18世紀イギリスの道徳感覚学派を代表する哲学者。北アイルランドのアルスターに生まれ、グラスゴー大学を卒業。のちにイギリス哲学者としては初めての教授職につき、同大学教授となる。彼はシャフツベリ伯の考えを受け継いで、人間の心性には利己的傾向とは独立に利他的傾向があり、また美的感覚と同様に、正邪の別を判断する自然で普遍的な道徳感覚、無私の慈愛があると主張し、徳を普遍的な慈愛と同一視した。また、普遍的幸福への傾向を善の基準として、功利主義者の「最大多数の最大幸福」とほぼ同じ句を用いていることは注目に値する。主著に『美および徳の観念の起源』(1725)、『道徳哲学体系』2巻(1755)などがある。
[杖下隆英 2015年7月21日]