日本大百科全書(ニッポニカ) 「スタインウェイ」の意味・わかりやすい解説
スタインウェイ
すたいんうぇい
Steinway & Sons Co.
アメリカの世界的に有名な高級ピアノ・メーカーで、創始者はハインリヒ・エングルハルト・スタインベグHeinrich Englehard Steinweg(1797―1871)。
ドイツのハンブルクでピアノ製造を行っていたハインリヒは、1850年ハンブルク店を長男のテオドルTheodore(1825―1889)に譲り、アメリカに移住した。1853年に彼はほかの4人の息子とともにニューヨークにピアノ製造会社を設立。その際、名前もドイツ語風から英語風に改め(スタインベグ→スタインウェイ)、スタインウェイ・アンド・サンズ・カンパニーと名づけた。長男テオドルの貢献は多大で、しばらくドイツに残って研究を続けた彼は、現代的ピアノの設計における数々の特許を取得している。1880年ハンブルクに主力工場を設立。1909年にはベルリン支社を開設。第二次世界大戦に際し、ドイツ工場は「敵国財産」としてドイツ政府の管理下に置かれ、空爆による被害も受けたが、1948年に製造を再開した。かくして現代的ピアノとして完成をみたスタインウェイ・ピアノは、最高級品として今日まで安定した評価を得ている。
スタインウェイ・アンド・サンズは1972年になってCBSに吸収され(CBS株37万5000株との交換で)、その子会社となったが、1985年CBSからアメリカの投資家グループに経営権が移り、持株会社スタインウェイ・ミュージカル・プロパティーズの傘下となる。同持株会社は1995年に管楽器メーカーのセルマーSelmer Co.と合併して、翌1996年スタインウェイ・ミュージカル・インスツルメンツSteinway Musical Instruments, Inc.に改称、株式上場を果たした。スタインウェイ・ミュージカル・インスツルメンツは総合楽器メーカーとして、スタインウェイのほか、管楽器、打楽器、弦楽器の有名ブランドを多数有している。1994年には世界初のコンサートチューナー(コンサート用グランド・ピアノを調整する技術者)のための教育機関、スタインウェイ・アカデミーがオープンした。
1997年(平成9)にはスタインウェイ・アンド・サンズの日本法人として、スタインウェイ・ジャパンが設立された。
[佐藤定幸]
『高城重躬著『スタインウェイ物語――ピアノのメカニズムと演奏技法』新装改訂版(1989・ラジオ技術社)』▽『リチャード・K・リーバーマン著、鈴木依子訳『スタインウェイ物語』(1998・法政大学出版局)』▽『マイルズ・チェイピン著、ロディカ・プレイトー画、川口桃永・吉上恭太訳『88Keys――スタインウェイピアノができるまで』(2001・小峰書店)』