打楽器(読み)ダガッキ(英語表記)percussion instruments

デジタル大辞泉 「打楽器」の意味・読み・例文・類語

だ‐がっき〔‐ガクキ〕【打楽器】

手やばちで、打ったり振ったりして音を出す楽器の総称。一定の音律をもつもの(木琴ティンパニなど)と、もたないもの(カスタネットシンバルなど)とがある。また振動するものの様態により体鳴楽器膜鳴楽器に分類される。

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精選版 日本国語大辞典 「打楽器」の意味・読み・例文・類語

だ‐がっき‥ガクキ【打楽器】

  1. 〘 名詞 〙 打ったり振ったりすることによって音を発する楽器の総称。皮をたたくことによって音を発する膜鳴楽器、楽器の本体が音を発する体鳴楽器の別がある。パーカッション
    1. [初出の実例]「マラカス、鈴(センセロ)、馬の顎(キハーダ)といったような、土俗的な打楽器」(出典:銀座二十四帖(1955)〈井上友一郎〉四)

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改訂新版 世界大百科事典 「打楽器」の意味・わかりやすい解説

打楽器 (だがっき)
percussion instruments

語義上は打って鳴らす楽器を意味するが,振り鳴らしたり,こすり鳴らしたりするものも含めた総称である。打楽器は人間の歴史が始まって以来の最も古い音具に属し,労働,祭事,戦いの前後,狩猟,踊りなど,信号やコミュニケーション,また自己表現の道具として重要であった。人間はまずはじめに肉体を楽器とした。体をゆすったり,手でたたいたり,こすったり,大地を踏み鳴らしたり,さまざまな音を発音させた。さらに音のするものを体に取り付けたりした。このようにして人間は豊かな創意をもって多種多様な打楽器を創ってきた。素材もさまざまで,大きさ,深さ,形なども用途に応じたものが作られた。形状は板状,棒状,管状,球状,容器状,円盤状,円筒形,壺形,三角形,四角形,六角形,八角形などがある。大きさは鈴の小さなものから直径120cm以上の銅鑼(どら)類,さらに,ドラム類では直径300cm以上の巨大なものまである。革の裏面に響線を付けたもの,打面に米と墨を練り合わせたものを塗って音質に変化をつけたものなどもある。

 分類方法もさまざまだが大部分の打楽器は体鳴楽器と膜鳴楽器に分類できる。

(1)体鳴楽器 楽器自体の振動によって音を発する。(a)明確な音程のあるもの マリンバ,木琴,鉄琴ないしメタロフォン,ビブラフォン,チェレスタハンドベルチューブ・ベル,スチール・ドラム,ゴング,青銅製鐘。(b)不確定な音程のもの トライアングル,シンバル,タムタム,カウベル,クラベス,木魚,樽,むち,鳴子,ウッド・ブロック,ルーラ(1本または束になっている小枝のむち),鈴類,カスタネット,メタル・カスタネット,マラカスキハダグイロラットルなど。

(2)膜鳴楽器 張られた膜の振動によって音を発する。(a)明確な音程のあるもの ティンパニ。(b)不確定な音程のもの 小太鼓,テナー・ドラム,ベース・ドラム,トムトム,ボンゴコンガティンバレスタンバリン,団扇太鼓,楽太鼓,締太鼓,小鼓,大鼓,桶胴など。

 なお管弦楽などでは呼笛,サイレン,自動車警笛などの気鳴楽器も打楽器奏者の分担になる場合がある。

 打楽器類の響きとリズムはさまざまな民族音楽の特色を鮮明に表す。東南アジアでは10世紀ころから銅鑼やメタロフォンによる合奏があった(ガムラン)。インドでは特有の太鼓によるリズム大系が考えられ,西洋音楽に多大な影響を及ぼした。中国では古来金属打楽器の種類が多く,かん高い響きを創り出している。日本では神前・仏前において打ち物はつねに重要な役割を果たし,とくに太鼓は種類も多くリズムも多彩で〈間〉のとり方は独特である。アフリカの打楽器は太鼓類が多く,太鼓によるコミュニケーションはたいへんすぐれたものである。西洋における主要な打楽器の多くは東洋から取り入れられた。管弦が主体であったオーケストラに早くから加わったティンパニにしても東方から輸入したものであった。20世紀に入り管弦楽曲に民族音楽の影響が入り,多くの打楽器が加えられるようになった。さらにストラビンスキーによる斬新なリズムと音響は新しい活力を与えた。バレーズは騒音も整えることで音楽に成りうるとして打楽器だけの《イオニザシヨンIonisation》(1931)を作曲した。ケージ,ハリソンLou Harrison(1917- )らが打楽器を中心に新しい音楽を創り始め,さらにヨーロッパではメシアンシュトックハウゼンらも打楽器で独自の世界を開き,西洋の音楽芸術に新しいジャンルを形成するほどになっている。
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百科事典マイペディア 「打楽器」の意味・わかりやすい解説

打楽器【だがっき】

手や桴(ばち)などで打ったり振り鳴らすなどして音を出す楽器。体鳴楽器と膜鳴楽器の大部分が含まれる。木琴鉄琴ティンパニゴングのように音律をもつものと,トライアングルカスタネットマラカス木魚のように音律をもたないがリズム楽器として重要なものとがある。→楽器
→関連項目管弦楽サイド・ドラムシンバルチューブ・ベルドラム(楽器)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「打楽器」の意味・わかりやすい解説

打楽器
だがっき
percussion instruments

管楽器、弦楽器に対し、楽器を手や桴(ばち)で打ったり、振ったりして発音する楽器の総称。しかし、通常、ピアノやダルシマーのような打弦楽器は含まない。ホルンボステルとザックスの楽器分類法の体鳴楽器(木琴、ゴング、拍子木など)と膜鳴楽器(太鼓など)にほとんど一致し、その種類はきわめて多い。

[柴田典子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「打楽器」の意味・わかりやすい解説

打楽器
だがっき
percussion instruments

打奏される楽器という意味であるが,実際には,打合せたり (カスタネット,シンバル) ,打鳴らしたり (木琴類,太鼓類,ゴング類) ,踏鳴らしたり (スリット・ドラム) ,振鳴らしたり (ガラガラ,マラカス,シストルム) ,はじき鳴らしたり (サンザ,口琴) ,摩擦して鳴らしたり (グイロ,グラス・ハーモニカ) する楽器の総称。木琴類,ティンパニ,グラス・ハーモニカなど音律が一定のものと,カスタネット,マラカスのように音律が不定のものとがあり,前者にはさらに木琴類のように音階を奏しうるものもある。西洋の管弦楽ではティンパニとシンバルを用いるのが定石。打楽器はすべての楽器中,歴史的には最古といわれ,今日でも世界各地に広く存在している。スリット・ドラムや拍子木,打板,ジャワのガムランのサロン,ボナン,ガンバンなど,日本や中国の鐘,西洋のベル,アイヌやカンボジアの人々が用いる口琴なども,すべて打楽器とみなされる。ホルンボステル=ザックスの楽器分類法では,太鼓類を膜鳴楽器,その他を体鳴楽器として区別している。

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世界大百科事典(旧版)内の打楽器の言及

【楽器】より

… これらは,現在までに発見された限られた考古学的資料に基づいて推定されたものなので,今後,新しい資料の発見によって変わりうるものである。それでも大きくみれば,人類の最初期に現れた楽器は打楽器に属するものであり,つぎに笛,太鼓,木琴と続いて,弦楽器は最後に作られたものといえそうである。また,現在世界中で使われているほとんどの楽器の直接の祖型は,紀元後,すなわち人類の歴史からすればごく最近に完成されたものである。…

※「打楽器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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