改訂新版 世界大百科事典 「スリップウェア」の意味・わかりやすい解説
スリップウェア
slipware
粘土と水を混ぜてクリーム状にしたスリップ(泥漿)で表面を装飾し焼成した陶器。広義には先史・古代以後,世界の各地で製作された彩文土器も含まれるが,一般には17~18世紀にイギリスの窯業地スタッフォードシャーの陶工トーマス・トフトやラルフ・トフトらがスリップで大きく人物や動物を描いた絵皿,もしくは器の表面全体に美しい網目や櫛目状の装飾を施した大皿やパイ皿をいう。これらはいずれも中世の伝統を受け継ぐ鉛釉の陶器で,比較的高温で焼成されている。装飾に用いるスリップはスリップ・トレーラーと呼ばれる筒の先に穴のあいた器に入れ,素地がなま乾きのときにスリップを搾り出しながら絵付けをする。櫛目がけや格子文のスリップ装飾は筒の先が3本から5本もあるトレーラーを使い均等に平行線や波状線をつける。
執筆者:前田 正明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報