日本大百科全書(ニッポニカ) 「セルロース分解菌」の意味・わかりやすい解説
セルロース分解菌
せるろーすぶんかいきん
セルロース(繊維素)を分解する能力をもつ菌類(細菌を含む)をいい、繊維素分解菌ともよぶ。セルロースは自然界で多量に生産される物質の一つであり、キノコ、カビ、細菌類によって分解され、土壌に還元される。また、哺乳(ほにゅう)動物の腸管内ではセルロース分解菌が働き、セルロースの消化を行い、動物が吸収可能な形に変えていく。カビではケトミウムChaetomium、トリコデルマTrichodermaが代表的で、ほかにある種のアオカビやコウジカビなどがある。キノコでは褐色腐れといわれる木材腐朽菌がこれであり、ツキヨタケ類、マイタケ類、ウスバタケ類、サルノコシカケ類など多数の種類がある。細菌類では好気性分解菌と嫌気性分解菌がある。前者にはセルロモナスCellulomonas、セルビブリオCellvibrio、チトファーガCytophagaやある種のバチルスBacillusなどがあり、後者には土壌中にみられるクロストリジウムClostridiumのほか、草食動物の消化管にみられるバクテロイデスBacteroides、ルミノコックスRuminococcus、ブチリビブリオButyrivibrioなどがある。分解はセルラーゼという酵素の生産によって行われると考えられている。トリコデルマTrichodermaや枯草菌Bacillus subtilisの生産するセルラーゼは医薬品としても利用されている。しかし、こうしたセルロース分解菌も、最近では木造住宅や衣類などを分解劣化する有害菌として問題視されてきている。
[曽根田正己]