アオカビ(読み)あおかび

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アオカビ」の意味・わかりやすい解説

アオカビ
あおかび / 青黴
[学] Penicillium

不完全菌類、モニリア目に属するカビをいう。ペニシルPenicil-とは箒(ほうき)を意味し、分生子柄―梗子(こうし)(フィアライド)―分生子の形態が箒状であるためにこの名がある。このような無性生殖のほかに、子嚢殻(しのうかく)―子嚢―子嚢細胞による有性生殖をもつグループもある。これはユーペニシリウムEupenicillium、タラロミセスTalaromyces、カルペンテレスCarpentelesなどの属として取り扱われ、ペニシリウムとともにアオカビとよばれる。このように有性生殖をもつ属は、子嚢菌類、ユーロチウム目(コウジカビ目)に属する。アオカビが発見された当初は1種類と思われ、パンがこれによってかびるので「パンのカビ」とよばれた。現在は300種以上発見され、外観は青色、緑色以外に紫色、オレンジ色、灰白色、黄色、白色などを呈するものまである。地球上に広く分布し、人間の生活環境中では、食品および食品材料や衣類などの上によくみられる。シトリヌムP. citrinumやイスランディクムP. islandicum、トクシカリウムP. toxyicariumは有毒性の物質を生ずることが知られ、黄変米動物飼料不適といった問題となる。工業的には抗生物質生産、酵素の製造、核酸関連物質の生産など、利用価値が高い。

[曽根田正己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アオカビ」の意味・わかりやすい解説

アオカビ(青黴)
アオカビ
Penicillium

子嚢菌類コウジカビ目コウジカビ科の糸状菌。約 150種知られている。日常最も普通にみられるカビで,靴や餅などによく生える。アオカビのなかでも P. chrysogenumペニシリンという抗生物質を分泌するので特に有名。枝分れを何回か行なった菌糸の上にフィアライド (小梗) と呼ばれるとくり形の細胞が生じ,胞子はその頂孔から絞り出されるようにして排出され,通常フィアライドの上にじゅず状に連なる。ある種のアオカビはクライストテシアという器官を生じ,有性生殖を行なったのち,子嚢および子嚢胞子を生じる。

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