チベット美術(読み)チベットびじゅつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チベット美術」の意味・わかりやすい解説

チベット美術
チベットびじゅつ

チベット仏教教義を表現した宗教美術。北インドの中世仏教美術の伝統を継ぎ,仏教とともにチベットに伝えられたもので,8世紀末期頃から存在した。作品は仏教経典により一定の形式のもとに描かれているが,信仰の表現として無記名であるため,年代測定が非常に困難である。菩薩に囲まれた仏陀輪廻転生の表現である生命の輪,儀礼,瞑想用に使われる幾何学的図形曼荼羅占星術と関連する象徴的図形,慈悲と智慧の結合を意味する男女交合図,偉大なラマ僧の肖像などを主題として極彩色で描かれた巻物様式のタンカが多く,壁や祭壇に掛けて用いられる。図中の翼や角のある神話的動物は仏教以前のポン教の影響と思われる。また死から再生までの過程を描いた地獄図や,忿怒像の護法神ダルマパーラを中心にした奇怪な図像もある。そのほか宗教儀礼用の多様な用具が発達している。

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