チベット

  • Tibet

百科事典マイペディアの解説

中国南西部,チベット人を中心とする民族自治区。漢字では西蔵。簡称は蔵。古くは吐蕃(とばん)と呼ばれた。主都はラサ。古くからチベット人はカム(東部,チャムド地区),ウェイ(中央部),ツァン(西部),アムド(北東部)の4区に呼び分け,カムは自治区に入っていなかったが,1965年これを含めて正式に自治区とされた。南はヒマラヤ山脈,北は崑崙(こんろん)山脈,東は青海・四川・雲南各省に接し,西はパミール高原に連なる。標高4000〜7000mの高原上にあり,降水量少なく,寒冷で荒野が多く,小塩湖,湿地が点在する。南部にはヤルンズアンボ川(ヤルツァンボ川とも。ブラマプトラ川の上流)が東流し,その流域で農業が行われ,麦類・チンコー(ハダカムギ)・野菜・果物を産するほか,羊・ヤギ・ヤクなどの遊牧が行われる。また金・塩・ホウ砂・麝香(じゃこう)・ダイオウなどを産する。道路はラサを中心にダージリン,カシミール,成都などに通じる。 古くから,ラサを中心としてダライ・ラマによるラマ教チベット仏教)に基づいた政教支配が続いたが,18世紀以後,清の統治下に入るとともに,インドを経由して英国の勢力が侵入した。その力を背景に辛亥(しんがい)革命後は中国の宗主権を否認,独立を主張した。1950年中国は軍隊を送って協定を結び,1951年ダライ・ラマを首班とする自治政府をつくり,チベットは中国の版図に入ったが,1959年これを不満とする武装蜂起(ほうき)が起こり,ダライ・ラマは亡命した。 中国の五つの民族自治区のうち,チベット自治区は最も遅れて1965年に成立したが,中国支配下の459万人余に及ぶチベット人人口(1990年)のうち,自治区の人口は263万人弱で,残りの約250万人は青海・四川・甘粛・雲南など各省のチベット族自治州・県に分布している。1966年からの文化大革命による混乱をへて1980年代以降新たな民族政策がチベットでは採られたが,漢族官僚による統治に対して1987年以後寺院を中心にチベット人の異議申立てが活発化している。122万8400km2。310万人(2014)。→チベット問題
→関連項目シムラ会議ソンツェン・ガンポチベット[人]中華人民共和国

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

中国西部の地域。チベット仏教を信仰し、独自の文化を構築してきた。17世紀以降からダライ・ラマ法王による統治が続いていたが、1959年、中国軍の侵攻に対して「チベット動乱」が発生。ダライ・ラマ14世はインドへ亡命、チベット亡命政府を樹立した。2009年から抗議のために焼身自殺する若い侶や尼僧が急増。これまで100人が自殺を図ったとされる。インドなどへの亡命者は計約13万人を超えるとされるが、亡命政府を承認した国はない。

(2013-02-16 朝日新聞 朝刊 京都市内 1地方)

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世界大百科事典 第2版の解説

ヒマラヤ山脈の北側,崑崙山脈の南側に横たわる山岳地帯を地理的にチベットと称する。東は大雪山脈で中国本土と区切られ,西端はカラコルム山脈に接している。このうちのヒマラヤ山脈沿いの南縁とその北東に伸びた延長線上の南北に走る渓谷,および青海以南の四川省西縁の土地に住する民族がチベット人である。漢文史料で〈(てい)〉とか〈(きよう)〉と呼ばれていたものが古い時代のチベット系民族であるともされるが,確かではない。

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旺文社世界史事典 三訂版の解説

パミール高原の東,崑崙 (クンルン) 山脈とヒマラヤ山脈にはさまれた中国の自治区。中国では西部と中部のチベットのみを西蔵 (シーツアン) という
高原農耕地と遊牧民を含み,漢代から氐 (てい) ・羌 (きよう) の名で知られ,7世紀に吐蕃がおこって民族の統一がなった。吐蕃は唐やネパールと交通し,チベット仏教やチベット文字を創始したが,9世紀半ば以後分裂して各地に諸侯が割拠した。13世紀にモンゴルに征服されると,紅帽(サキャ)派の僧が重用され,明代にも優遇された。14世紀にツォンカパが出て堕落したチベット仏教を改革し,黄帽(ゲルク)派を創始した。以後,代々ダライ=ラマが宗教上・政治上の首長となったが,18世紀には清朝の支配下にはいり,また19世紀後半からはイギリスの圧力も加わった。辛亥革命後,ダライ=ラマは中国の宗主権を否認して完全独立を主張したが,中国政府はこれを認めなかった。第二次世界大戦後,国民政府はチベットに自治権を認めたが,中華人民共和国が成立すると,1951年チベットに軍を進めて「和平解放に関する協定」を結び,ダライ=ラマは59年インドに亡命した。

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