チューレ文化(読み)チューレぶんか(その他表記)Thule culture

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チューレ文化」の意味・わかりやすい解説

チューレ文化
チューレぶんか
Thule culture

900~1100年頃アラスカ西部に発達したエスキモーの先史文化。ベーリング海峡付近には,前 300~後 900年に,シベリア北東文化と密接な関係をもった古ベーリング海文化ならびにバーナーク,プヌークという一連の文化が存在していた。チューレ文化はバーナーク文化から発展したもので,鯨骨や石,土で造った半地下式の家に住み,アザラシセイウチクジラトナカイホッキョクグマなどの猟を生業とした。銛 (もり) ,弓矢,そり,皮ボート,調理用土器,ランプ皿,磨製のスレート石器その他,生活用具は豊富で,特に精巧につくられた骨歯角製の銛先,彫刻を施した装飾品に特色がある。チューレ文化はその後,極北カナダ,グリーンランドへ移動して,先住のドーセット文化と交わり,他方 13世紀に移動してきたノルウェー文化の要素も取入れて,歴史時代のエスキモー文化を形成した。さらに 14世紀以降は再び西方へ移動し,この結果,極北地方ではきわめて等質的なエスキモー文化が出現した。

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世界大百科事典(旧版)内のチューレ文化の言及

【エスキモー】より

…その結果,前3千年紀に始まり,現在のエスキモーの居住域とほぼ分布が一致する極北小型石器文化をエスキモー文化の最古のものとみる説と,海への適応がアラスカではそれよりも古いオーシャン・ベイ文化期(前4千年紀)から始まっており,しかも極北小型石器文化の起源が必ずしも明らかでないことを根拠に,エスキモー文化の最古層を前1000年ごろに始まるノートン文化に求める説とがある。ベーリング海地域でノートン文化の基盤の上に発展した後のチューレ文化(1000B.P.以降)は,比較的短期間にエスキモー全地域に伝播し現在のエスキモー文化の基礎となった。 伝統的なエスキモー文化は外部からの諸影響により大きな変化を遂げた。…

※「チューレ文化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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