改訂新版 世界大百科事典 「ホホカム文化」の意味・わかりやすい解説
ホホカム文化 (ホホカムぶんか)
北アメリカ南西部の砂漠地帯(アリゾナ州南部)に発展したアメリカ・インディアンの先史文化。開拓期(前100-後500),植民期(500-900),定着期(900-1100)および古典期(1100-1400)に分けられ,現在のピマ族Pima,パパゴ族Papagoの祖先の文化と考えられる。ヒラ川流域のスネークタウンSnaketown,ロス・ムエルトスLos Muertos,カサ・グランデCasa Grande,プエブロ・グランデPueblo GrandeなどがホホカムHohokam文化の主要遺跡である。遺跡は定住的集落からなる。住居は開拓期の,方形で土壁と枝・草でつくられた屋根と狭い通路状入口をもつ形態から,長方形,楕円形の形態に変わり,さらに古典期にはプエブロ文化の影響をうけて,日乾煉瓦(アドベ)の集合住宅形式になった。集落には,メソアメリカからの影響を示す平たんな上面をもつマウンドと球戯場をともなう。とくにカサ・グランデ遺跡には,天体観測に用いられたと考えられるアドベ造りの3~4階建ての建物をもつ,区画された集合住宅群がみられる。赤・茶色の無文土器,淡黄地赤彩文土器が顕著に発達したほか,土製人形,ビーズ,耳栓,鼻飾,貝製品などの装飾品,銅製の鈴などが特徴的な文化要素である。葬法は火葬で,焼いた骨は土器に入れて埋葬された。メキシコ北西部,太平洋沿岸などとの遠距離交易を示唆する貝などもある。経済基盤は灌漑用水路網によるトウモロコシ,カボチャ,マメを中心とする集約的農耕にあった。用水路はヒラ川,ソルト川合流点付近(現在のフェニックス市周辺)に顕著に発達し,数十kmの長さをもち,複数の集落により利用・管理された用水路もある。
執筆者:小谷 凱宣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報