日本大百科全書(ニッポニカ) 「セイウチ」の意味・わかりやすい解説
セイウチ
せいうち / 海象
walrus
[学] Odobenus rosmarus
哺乳(ほにゅう)綱鰭脚(ききゃく)目セイウチ科に属する海産動物。雄は体長3.6メートル、体重1.6トンに達するが、雌は最大2.6メートル、体重1.3トンどまりである。雌雄とも上顎(じょうがく)の犬歯が離乳のころから牙(きば)として発達し、雄では最長1メートルに達するものもいるが、雌ではやや短い。これがゾウを連想させるため「海象」の字があてられた。耳介はない。皮膚は厚く、しわが多い。子供のときには紫褐色の皮膚に茶褐色の毛が多く生えているが、成長に伴って脱毛し、茶褐色の皮膚を裸出する。吻端(ふんたん)は丸く突出し、太くて短い触毛が密集して生える。四肢とも5指があり、後脚のつめは前指のつめよりも長い。足裏にも毛が生えている。牙で海底の砂を掘って二枚貝を食べる。
4~6月にかけて交尾が行われ、5月を中心に分娩(ぶんべん)する。多くの子は約2年で離乳し、雌は6、7年、雄は8~10年で成熟し、寿命は約40年である。北極海の海岸や氷上で500頭くらいの群れをつくり、1日の大部分を寝て過ごす。もっとも多く生息しているのはベーリング海峡付近で、冬には海峡の南に集まり、夏は海峡の北に多い。この付近に約14万頭、バレンツ海に数千頭、ラプテフ海に約3000頭、デービス海峡に約1万頭が生息していると推定されている。
[西脇昌治]