日本大百科全書(ニッポニカ) 「総額表示方式」の意味・わかりやすい解説
総額表示方式
そうがくひょうじほうしき
商品価格として消費税相当額を含む支払い総額を表示する方式。消費税分が表示価格に入っているため「内税(うちぜい)方式」、あるいは「税込み表示方式」ともよばれる。これに対し、商品本体の価格のみを表示し、支払い段階で消費税相当額が加算される方式を「外税(そとぜい)方式」「税抜き表示方式」とよぶ。総額表示には、税込み価格を表示する方式と、税抜き価格、消費税相当額、合計額を表示する方式などが該当する。たとえば、税抜き価格1000円で消費税率10%の場合は「1100円」「1100円(税込み)」「1100円(税抜き1000円)」「1100円(うち消費税100円)」「1100円(税抜き1000円、消費税100円)」などが総額表示にあたる。一方、計算しなければ支払総額がわからない「1000円(税抜き)」「1000円+消費税」「1000円(税抜き)+100円(消費税)」は総額表示には該当しない。総額表示方式は、支払い総額が一目でわかる利点がある一方、消費税分がはっきりとわからない場合もあり、消費者の納税意識が希薄になりかねないとの批判もある。
日本では1989年(平成1)の消費税導入以来、総額表示方式と外税方式の両方が認められていたが、改正消費税法が施行された2004年(平成16)4月から総額表示方式に一本化された。また2007年4月から、企業内の帳簿などの記載も総額表示方式が義務づけられた。ただ消費税率の段階的引き上げ(5%→8%→10%)を控え、消費増税転嫁法(平成25年法律第41号)が施行された2013年10月から2021年3月末までに限って、表示価格が税込み価格であると誤認されない措置がとられている場合、総額表示規制を一部緩和し、「本体価格+消費税」などの表示が認められた。短期間に二度にわたって税率が変わり、値札などを変更する事業者の手間や費用を抑えると同時に、消費者の混乱を避けるねらいがあった。
なおヨーロッパ各国は生活必需品の税率を低くする軽減税率(複数税率)制度を導入しており、消費者に税込みの支払総額が明確にわかるよう、各国とも総額表示方式を採用している。日本も2019年(令和1)10月の軽減税率導入もあって、2021年4月以降は総額表示方式のみが認められている。
[矢野 武 2021年9月17日]