連帯債務(読み)レンタイサイム

デジタル大辞泉 「連帯債務」の意味・読み・例文・類語

れんたい‐さいむ【連帯債務】

複数の債務者が、同一内容の給付について各自独立に債権者に対して全部の給付をする義務を負い、その中の一人が弁済すれば、他の債務者も債務を免れる債務。

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精選版 日本国語大辞典 「連帯債務」の意味・読み・例文・類語

れんたい‐さいむ【連帯債務】

  1. 〘 名詞 〙 同一内容の給付について、数人の債務者が各自独立に、その全部を弁済する義務を負うが、そのうちの一人でも弁済すれば、他の債務者もすべて債務を免れる債務関係。〔民法(明治二九年)(1896)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「連帯債務」の意味・わかりやすい解説

連帯債務 (れんたいさいむ)

たとえば,A,B,Cの3人がDから900万円借りて,その返済について連帯債務を負うと,A,B,Cは各自独立に900万円をDに支払わなければならず,A,B,Cのいずれかが900万円を支払うと,他の者も債務を免れる。このように,数人の債務者が同一内容の給付について各自独立に全部の給付をなす義務を負い,その中の1人が弁済すれば他の者も債務を免れる多数当事者の債務を連帯債務という。数人の者が連帯債務を負うと,各自はそれぞれ債務の全部について給付義務を負うから,債務者の中に1人でも弁済する資力のある者がいれば,債権者としては債権の十分な弁済を受けることができる。したがって,連帯債務は債権担保の機能を果たすもの(人的担保手段である)といえる。

連帯債務は,各債務者がそれぞれ債務全額の給付義務を負う点で不可分債務不可分債権・不可分債務)と類似している。しかし,不可分債務において各債務者がそれぞれ全部の給付義務を負うのは,給付が性質上または意思表示によって不可分だからであり,その効力も民法434~439条の絶対的効力(債務者の1人について生じた事由が他の債務者に効力を及ぼすこと)を生じない点で,連帯債務と異なっている。ただ,意思表示による不可分債務は債権担保の機能を果たすから,その点で連帯債務と近似している。

 連帯債務はまた,複数の者がそれぞれの法律原因に基づいて全部賠償の義務を負う場合(たとえば被用者は民法709条により損害賠償責任を負い,使用者は715条によって責任を負う場合など)に生じる不真正連帯債務と類似している。しかし,連帯債務者間には,主観的共同関係があり,それゆえ民法434~439条の絶対的効力が生じるのに対して,不真正連帯債務は債務の偶然的競合にすぎず,したがって民法434~439条の絶対的効力が生じない点で,両者は異なる,とされる。

 連帯債務はさらに,債権担保(人的担保)の機能を果たす点で,連帯保証と類似している。しかし,連帯保証は保証の一種であって,主たる債務に対して付従性を有する(主たる債務が存在しなければ,連帯保証債務も存在しない)点で,各人が独立に債務を負っている連帯債務と異なる。

同一の債務について数人の債務者がいる場合,別段の意思表示をしないと,その債務は数人の間に平等の割合で分割される(分割債務の原則。民法427条)が,連帯の意思表示(契約および遺言)をすると,連帯債務となる。また,連帯の意思表示をしなくても,法律に連帯とする旨の規定(たとえば,民法761条や商法511条1項など)があれば,連帯債務が発生する。

債権者は,連帯債務者の1人に対し,または同時もしくは順次に総債務者に対し,債務の全部または一部の履行を請求することができる(432条)。たとえば冒頭の例でいえば,Dは,A,B,Cの中の任意の1人(たとえばA)に対して全部(900万円)または一部(たとえば600万円)を請求してもよいし,A,B,Cに対して同時にまたは順次に,全部ずつ(900万円ずつ)を請求し,または一部ずつ(たとえば,Aに600万円,Bに200万円,Cに100万円)請求してもよいのである。この点が,債権担保(人的担保)手段としての連帯債務の最も重要な効力である。

 他方,連帯債務者の中の1人が弁済をすれば,他の債務者も債務を免れる。弁済と同視すべき事由(代物弁済および供託)についても同様である。

 このほか,民法は,連帯債務者の1人に一定の事由が発生した場合には,他の債務者にもその効力を及ぼすべきものとしている(434~439条)。すなわち,連帯債務者の1人に対する履行の請求は他の債務者に対しても請求としての効力を生じ(434条),連帯債務者の1人と債権者との間に更改(435条),相殺(436条),混同(438条)があった場合には,他の債務者も債務を免れ,さらに,連帯債務者の1人に対して免除(437条)がなされ,あるいは連帯債務者の1人のために時効(439条)が完成したときには,免除を受けあるいは時効が完成した債務者の負担部分(連帯債務者相互の内部的関係で最終的に負担すべき部分)については他の債務者も債務を免れる(以上の事由以外の事由は,他の債務者に効力を及ぼさない相対的効力を持つにとどまる)。たとえば,前例で,DがAの債務を全額免除したり,あるいはAの債務について時効が完成した場合には,A,B,Cの負担部分を300万円ずつとすると,B,CはAの負担部分300万円を差し引いた残り600万円について連帯債務を負い続けることになる(なお,一部免除の場合の処理については考え方が分かれている)。連帯債務になぜこのような絶対的効力が生じるのかについては,学説が分かれているが,通説は,連帯債務者間には緊密な主観的関係があるから,目的の到達(弁済および弁済と同視すべき事由)以外の事由についても,ある程度の絶対的効力を認めることは,当事者間の法律関係を簡易に決済させ,公平に適することにもなる,と説明している(主観的共同関係説)。

連帯債務者の1人が弁済など自分の負担で(出捐(しゆつえん)で)共同の免責を得たときには,他の債務者に対してその負担部分に応じて求償することができる(442条1項)。求償しうる範囲は,出捐した額,免責のあった日以降の法定利息,および避けることのできない費用その他の損害の賠償である(たとえば弁済の費用とか訴訟費用など)である(同条2項)。負担部分は,第1次的には連帯債務者間の特約によって定まり,特約がないときには連帯債務を負担することによって受けた利益の割合に従い,それもまた不明であるときには平等の割合とされる。

 なお,連帯債務者は,弁済など共同の免責のための出捐行為をするに当たっては,他の債務者に対して事前および事後に通知をしなければならず,これを怠ると,求償権の制限など不利な扱いを受けることがある(443条)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「連帯債務」の意味・わかりやすい解説

連帯債務
れんたいさいむ

数人の債務者が、同一内容の給付について各自独立に全部の給付をなす義務を負い、そのうちの1人の給付があれば、他の債務者も債務を免れる多数当事者の債務、と定義される(民法432条~445条)。連帯責任ということもあるが、正確な呼び方ではない。たとえば、甲、乙、丙の3人が丁から90万円を借り、その返済について連帯債務を負うと、甲、乙、丙は、各自独立に90万円を丁に支払わなければならず、甲、乙、丙のいずれかが90万円を支払うと、他の者も債務を免れることになる。このように連帯債務では、複数の債務者がそれぞれ債務の分割された一部ではなく、全部について給付義務を負うから、債務者のなかに1人でも資力のある者がいれば、債権者は、債権の十分な弁済を受けることができる。したがって、連帯債務は人的な債権担保手段であるといえる。

[淡路剛久]

類似の制度との比較

連帯債務を、債務の帰属形式――すなわち数人の債務者が各自独立に全部の給付義務を負うという法形式――からみると、いくつかの制度と同じになるので、それらとの違いが問題となる。たとえば連帯保証は、連帯債務と類似する。しかし、連帯保証は保証の一種であって付従性を有する(主たる債務が存在しなければ、連帯保証債務も存在しない)点で、連帯債務と区別される。不可分債務も、各債務者が全部の給付義務を負う点で連帯債務と類似する。しかし、それは、連帯債務と違って、給付が性質上または意思表示により不可分だからであり、その効力も民法第434条ないし第439条の絶対的効力を生じない点で、連帯債務と異なる。不真正連帯債務の場合にも、連帯債務と同様の関係が生じる。たとえば、使用者責任の場合、被用者は民法第709条により、使用者は民法第715条により、それぞれ全部賠償義務を負い、いずれかの履行があれば、他の者は債務を免れる。この点、連帯債務とまったく同一である。しかし、不真正連帯債務の場合には、債務者間に主観的共同関係がなく、したがって、民法第434条の絶対的効力が生じない点で、連帯債務とは違う、とされる。

[淡路剛久]

発生原因

民法は多数当事者の債務の原則を分割債務とした(427条)。したがって、連帯の意思表示(契約、遺言)があるか、連帯とする旨の法律の規定(たとえば、民法44条2項・761条、商法511条1項など)がある場合に、連帯債務が生じることになる。

[淡路剛久]

対外的効力

債権者は、連帯債務者の1人に対し、または同時もしくは順次に総債務者に対し、全部または一部の履行を請求することができる(民法432条)。この点が債権担保手段としての連帯債務の中心的な効力である。連帯債務者の1人について弁済およびこれと同視すべき事由(たとえば、代物弁済・供託)が生じた場合には、他の債務者も債務を免れる。そのほか、一定の事由(同法434条~439条)は、他の債務者にも効力を及ぼす、いわゆる絶対的効力を生ずる。すなわち、連帯債務者の1人に対する請求は他の債務者に対してもその効力を生じ、連帯債務者の1人と債権者との間に更改、相殺、混同があった場合には、他の債務者も債務を免れ、連帯債務者の1人に対して免除がなされ、あるいは連帯債務者の1人のために時効が完成した場合には、その債務者の負担部分につき他の債務者も債務を免れる。たとえば、前例の甲、乙、丙の負担部分をそれぞれ30万円ずつとした場合、甲に対して免除し、あるいは甲について時効が完成すると、乙、丙の債務は60万円となる。なお、以上のように絶対的効力事由の広い連帯債務を講学上、共同連帯とよんでいる(その反対を単純連帯という)。

[淡路剛久]

対内的効力

連帯債務者の1人が、自分の出捐(しゅつえん)(他人に財産上の利益を与えること)で総債務者の共同の免責を得たときには、他の債務者に対しその負担部分に応じて求償することができる(民法442条1項)。たとえば、前例で甲が90万円弁済した場合には、乙、丙からそれぞれ30万円ずつ求償できる。負担部分は、第一次的には連帯債務者間の特約によって定まり、特約がないときには連帯債務を負担することによって受けた利益の割合に従い、それもまた不明であるときには平等の割合とされる。

[淡路剛久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「連帯債務」の意味・わかりやすい解説

連帯債務
れんたいさいむ
Gesamtschuld

2人以上の債務者が各自独立に全部の履行をすべき債務を負担し,しかも1人が履行すれば全員がその債務を免れる債務 (民法 432) 。当事者間の契約または遺言の意思表示または法律の規定 (民法 761,商法 80,511など) によって成立する。法律上,1個の債務を数人が負担するのではなく,数人が独立した数個 (債務者の人数分) の債務を負担するのであるが,各債務者間になんらかの主観的共同の目的があり,互いの債務に関連があることに基づいて,債務者の1人について生じた事由が,一定の範囲で他の者に効力 (絶対的効力) を及ぼす。弁済,代物弁済,供託,相殺,受領遅滞,履行の請求,更改,免除,混同,時効完成などがそれであるが,上記以外の事由 (請求以外の時効中断,債務者の1人の不履行など) は他の者に影響を及ぼさない。連帯債務は内部関係において各自の負担部分が定まっており,ある者の出捐によって債務を免れた他の債務者は,自己の負担部分に応じて出捐者の求償に応じなければならない。

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百科事典マイペディア 「連帯債務」の意味・わかりやすい解説

連帯債務【れんたいさいむ】

数人の債務者が,同一の内容の給付について,各自独立に全部の弁済をなすべき債務を負担し,そのうちの1人が弁済すれば他の債務者もことごとく債務を免れる債務関係(民法432条以下)。一般に連帯責任ともいう。債権者は各債務者に対して独立の債務者であるかのように請求をすることができるから,債権の効力はきわめて強い。連帯債務者の内部では各自の負担部分が定まり,1人が弁済したときには,一定の条件のもとで他の債務者に対して負担部分に応じた求償をなすことができる。連帯保証とは似て非なるものである。

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不動産用語辞典 「連帯債務」の解説

連帯債務

同一債務について、複数の債務者が債務の全てをそれぞれ負担する方法のことを「連帯債務」といいます。
そのため、債権者はどの債務者に対しても債権の支払いを請求することができますが、一人が債務を全て支払った場合には、全ての債務者の債務が消滅します。

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