日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
トマ(Henri Thomas)
とま
Henri Thomas
(1912―1993)
フランスの詩人、小説家。ボージュ地方アングルモンに生まれる。詩人としてはベルレーヌの流れをくみ、ささいな日常事を独特な声の抑揚のなかに転置して詩的世界を形成している。また小説家としても、日常の現実のなかに突如としてひらめく楽園の幻を、ストーリー形式に定着させ、その詩的瞬間を結晶させることに鋭意専心した。代表的な詩集として『生命のしるし』(1944)、『不在の世界』(1947)などがあり、代表的な小説として『ロンドンの夜』(1956)、『ジョン・パーキンズ』(1960)、『岬』(1961)などがある。
[若林 真]
『若林真訳『ロンドンの夜』(1971・白水社)』▽『若林真訳『ジョン・パーキンズ』(1965・新潮社)』▽『若林真・永井旦訳『岬・世捨て人』(1964・白水社)』