トレイルランニング(読み)とれいるらんにんぐ

知恵蔵 「トレイルランニング」の解説

トレイルランニング

未舗装路(トレイル)を走るスポーツ。トレイルとしては、林道登山道、ハイキングコース、砂利道など多様な未舗装路がある。ロード(舗装路)と違い、トレイルの路面には、石、岩、木の根、階段などがあって平らではなく、不安定な場所や傾斜の急な場所、ぬかるんだ場所や水が流れているところを走ることもある。そのため、安定性、衝撃吸収性、防水性のあるトレイルランニング用シューズが使われることが多い。
日本のトレイルランニング競技の歴史は、1913年に開催された富士登山競争が最古とされる。25年以降は駅伝競技となり、何度か中断を経て現在に至る。大会発起人の金栗四三(かなぐりしそう)の名を冠した「金栗四三杯」が一般の部優勝チームに与えられる。48年には個人種目の富士登山競争も始まった。
日本のトレイルランニング競技普及の草分けとなったのは、ヨーロッパアルプス3大北壁冬季単独初登山や南米アコンカグア南壁冬季単独初登山などの記録を達成した登山家、長谷川恒男(故人)の業績を記念し、東京都山岳連盟が創設した「日本山岳耐久レース長谷川恒男CUP」(通称ハセツネCUP)である。本大会は、奥多摩主要峰を走破する全長71.5キロメートル、制限時間24時間の競技で、第1回大会は参加者約300名であったが、ランニングブーム、トレイルランニングブームによって参加希望者は増大し、参加申し込み受付直後に定員に達する人気となっている。第23回大会となる2015年の募集定員は2500名。
トレイルランニングの大会には大きく分けて二つのタイプがあり、一つはピークハントと呼ばれ山頂に到達するタイムを競うもの、もう一つは山麓から標高約1000メートル前後までの山を縦走する山岳路を走破するタイプである。日本では、10キロメートル程度の短距離からハセツネCUPに代表される中距離の大会がほとんどだが、北米やヨーロッパアルプスなどでは100マイル(約160キロメートル)規模の長距離を2日間以上かけて走る歴史あるレースが多く開催されている。
日本では、トレイルランニングの人気の高まりと共に、ランナーマナーや、ハイカーや登山者との間のトラブルが問題となり始めた。15年3月31日、環境省は「国立公園内におけるトレイルランニング大会等の取扱いについて」とする国立公園課長通知を各地方環境事務所長あてに発表。東京都も同年3月30日に、「東京都自然公園利用ルール」を発表し、この中で、登山、トレイルランニング、マウンテンバイク、ペット同伴登山など、利用形態に応じたルール (マナー含む)などについて記載した「自然公園利用の個人ルール」全20項目と、タイムを競い参加者が100名を超えるトレイルランニング大会等開催時のルールについて全10項目を定めている。

(葛西奈津子 フリーランスライター/2015年)


トレイルランニング

森や山中、自然公園などの未舗装の道を走るスポーツ。以前は山岳マラソンなどと称され、山野を舞台に活動する一部の人たちがトレーニングを兼ねて登山道や林道を走っていた。近年は自然に触れながら体力増進やダイエットを図ろうとフィットネス感覚で始める人が増えている。アウトドアの体験スクールやフィットネスクラブのイベントなどにも取り入れられている。本場アメリカでは市民マラソン並みに多数のレースを開催。

(松倉一夫 アウトドアライター / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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