トロイライト(その他表記)troilite

改訂新版 世界大百科事典 「トロイライト」の意味・わかりやすい解説

トロイライト
troilite

単硫鉄鉱ともいう。化学組成FeSの鉱物磁硫鉄鉱うち,鉄と硫黄の比がほとんど1:1のものをいう。2C型磁硫鉄鉱。140℃以上では転移して1C型磁硫鉄鉱となる。六方晶系。色,光沢硬度,へき開等は磁硫鉄鉱に同じ。比重4.65。磁性はない。隕石中に最初に発見したトロイリDominico Troiliにちなんで命名。隕石の主要な構成鉱物の一つで,ほとんどの隕石に数%以下含まれる。コンドライト中では金属鉄とともにケイ酸塩鉱物を囲み,鉄隕石中では金属相の中に粒状に存在する。月の岩石中,あるいは地球上の蛇紋岩中にもまれに産する。
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化学辞典 第2版 「トロイライト」の解説

トロイライト
トロイライト
troilite

いん石やいん鉄中に見つかる鉱物で,単硫鉄鉱ともいう.地球上で見いだされる地殻中の硫化鉄は,そのほとんどが鉄原子が欠損した非化学量論的硫化鉄(Ⅱ)(Fe1-xS)であるが,トロイライトは,ほぼ

Fe:S = 1:1
の化学量論的硫化鉄(Ⅱ)である.トロイライトは,地殻中では鉄または鉄原子が欠損した非化学量論的硫化鉄(Ⅱ)(Fe1-xS)の磁硫鉄鉱(ピロータイト,pyrrhotite)中に共存することが知られているが,ごくわずかにしか存在しない.いん石やいん鉄中に見いだされるトロイライトの鉛同位体比(206Pb/204Pb)や硫黄同位体比(32S/34S)は地球の年齢測定や地質年代測定に利用される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トロイライト」の意味・わかりやすい解説

トロイライト
troilite

磁硫鉄鉱のうち,その化学組成が FeS のもの。単硫鉄鉱と呼ばれることもある。隕石中にはよくみられるが,地球の岩石にみられることは大変珍しい。比重 4.6~4.8。新鮮なものは黄褐色,青銅状の光沢を示す。これを含む隕石を記述した D.トロイリにちなんで命名された。

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世界大百科事典(旧版)内のトロイライトの言及

【磁硫鉄鉱】より

…しかし,xの値および温度に応じて結晶系や単位格子,あるいは磁気的性質も,厳密には異なるので,本鉱を加熱した場合に得られる最も単純な単位格子(六方晶系,1C型)を基準として,1C~6C型および幾つかの中間型に細分される。FeS(x=0,トロイライト,2C型)は厳密に六方晶系。Fe11S12(x=0.08,6C型),Fe9S10(x=0.1,5C型)は単斜晶系。…

※「トロイライト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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