改訂新版 世界大百科事典 「ハンガリー盆地」の意味・わかりやすい解説
ハンガリー盆地 (ハンガリーぼんち)
Hungary Basin
ドナウ川の中流域に広がる盆地。北と東はカルパチ山脈に囲まれ,西はアルプスのふもと,南はディナル・アルプスに区切られる。ハンガリーではカルパチ盆地Kárpát medenceという。面積はほぼ30万km2。アルプス造山運動によって形成され,地形的には平たんではなく,ハンガリー大平原,ドナウ川以西の丘陵地,北西部の小平原,南西部のザグレブ盆地,東部のトランシルバニア盆地などに分かれる。かなり大陸的な気候で,冬が寒く夏がやや暑い。植物は中心部では草地や小さな林(とくにアカシア)からなる。歴史的には,古代より多数の民族がここに入りこんだ。中世以降でも,ゲルマン,スラブ,フン,アバール,マジャール,モンゴル,トルコなど。ほぼ11世紀にハンガリー王国がこの盆地を統一(オスマン帝国支配期を除く)していたが,第1次大戦後,周辺がチェコスロバキア,ルーマニア,ユーゴスラビアに分割された。しかし盆地内の諸地域の協力関係はたえず求められ続けている。
執筆者:南塚 信吾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報