アカシア(その他表記)wattle
Acacia

デジタル大辞泉 「アカシア」の意味・読み・例文・類語

アカシア(acacia)

《「アカシヤ」とも》
マメ科アカシア属の常緑樹の総称。葉は羽状複葉。花は黄色、まれに白色で、多数集まって穂状に咲く。オーストラリアを中心に約650種が分布。ギンヨウアカシアアラビアゴムノキなどが含まれる。
ハリエンジュの俗称。花は白い。にせアカシア。 花=夏》

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精選版 日本国語大辞典 「アカシア」の意味・読み・例文・類語

アカシア

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] acacia )[ 異表記 ] アカシヤ
  2. マメ科アカシア属の樹木の総称。オーストラリアを中心に熱帯に分布し、アラビアゴムノキなど数百種ある。日本には自生せず、近くでは台湾にソウシジュという常緑樹がある。狭義には、園芸関係者の間で誤ってミモザと呼ばれるハナアカシアをさす。〔薬品名彙(1873)〕
  3. 植物「はりえんじゅ(針槐)」の俗称。《 季語・花は夏 》
    1. [初出の実例]「停車場通りの両側のアカシヤの街樾(なみき)は」(出典:札幌(1908)〈石川啄木〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「アカシア」の意味・わかりやすい解説

アカシア
wattle
Acacia

マメ科アカシア属に含まれる500種以上の種類の総称名である。ほとんどの種類は常緑性の大高木から小高木で,しばしばとげを有している。日本ではアカシア類をミモザと通称するが,これはイギリスで,フランス南部から切花として輸入されるフサアカシアミモサmimosaと呼ばれることから来たものである。しかし,植物学的にはオジギソウMimosaがミモサと呼ばれるもので,おしべが4~10本あり,おしべが多数のアカシア属とは区別されるべきものである。また,ニセアカシアをアカシアと呼ぶ人も多い。

 アカシア属はオーストラリアに400種以上あり,アフリカのサバンナ域にも多い。乾燥した亜熱帯から暖温帯に分布域の中心があるので,耐寒性のある種類は少なく,観賞価値が高いものが多いが,日本での栽培は少ない。

 フサアカシアA.decurrens Willd.var.dealbataLink) F.v.Muell.(英名silver wattle,mimosa)は,ミモザの名で花木・切花にされる代表種の一つである。常緑の高木になり,深緑色の葉は2回羽状複葉になる。花は葉腋(ようえき)の総状花序に多数が房状につき,鮮黄色で,樹冠全体が花でおおわれるように開花する。開花期は早春。オーストラリア原産で,本州の関東地方以西の沿海部で,庭園樹,緑化樹として植栽される。

 ギンヨウアカシアA.baileyana F.v.Muell.(英名Cootamundra wattle)もフサアカシアに似るが,若枝に毛がなく,葉は全面に白粉を帯びて灰緑色を呈し,葉長4~6cmと小さい。花色は濃黄色,開花期は早春。原産地はオーストラリアで,日本では最も多く切花として用いられ,関東地方以西の本州沿海部,四国,九州で植栽する。

 サンカクバアカシアA.cultriformis Cunn.の葉は葉柄の変化したもので,灰緑色,ほぼ三角形である。葉のついた枝を切花用に使う。

 キンゴウカン(金合歓)A.farnesiana Willd.(英名sweet acacia)は,鮮黄色で芳香のある花をつける低木で,耐寒性はないので温室で栽培される。花からは香水が,樹皮からタンニンが採れ,観賞用に植栽される。

 モリシマアカシアA.mollissima Willd.(英名black wattle)は,英名のように樹皮が黒く,やはり早春に鮮黄色の花をつける。オーストラリア原産で,日本の暖地で緑化樹,肥料樹として植栽される。

 ソウシジュ(相思樹)A.confusa Merrill(英名Taiwan acacia)は常緑大高木になる。葉は単葉,披針形で革質,長さ8~10cm,葉脈が数本,平行に走る。果実は長さ数cmの豆果。原産地はフィリピンとされるが,マレーシア地域に広く見られ,日本では沖縄,小笠原諸島などの暖地で植栽される。

 これら園芸的に利用されている耐寒性の種は,やせた乾燥地でもよく生育する。日当りのよい場所に適し,繁殖は実生により行う。生成は早い。

 アカシア属でソウシジュのように高木になる種は,材木として植林され,その早い生長が注目されている。樹皮からタンニンが採取される種も多く,モリシマアカシア,アラビアゴムモドキA.arabica Willd.(アフリカ原産)や,薬用にする阿仙薬が採取されるアセンヤクノキA.catechu Willd.(インド原産)などが有名である。しかし,アカシア属の最も重要な産出物は,アラビアゴムと称される樹脂であろう。アラビアゴムを産出する種は多数ある。産出量の多いものはアラビアゴムA.senegal Willd.(西アフリカ原産),アラビアゴムモドキ,アセンヤクノキなどであるが,A.albida Delile(北アフリカ),A.dealbata Link(オーストラリア),A.drepanolobium Harms(アフリカ),A.greggii Gray(メキシコ),A.horrida Willd.(ケープ地方),A.leucophloea Willd.(インド,ミャンマー)など世界各地のアカシア属植物からアラビアゴムやそれに類似した樹脂が採取される。また,アフリカやアボリジニーがアカシア属の若葉,若い豆のさや,あるいは成熟した豆を食用に利用している例も多い。
執筆者:

古代イスラエル人にとってこの木はシッタと呼ばれる聖木であり,〈契約の箱〉や幕屋を作る際には必ず使用された。バビロニアではイシュタルの神木とされ,生命力の象徴でもあった。生長がきわめて早いため,アメリカ開拓時にも家造りにこの木がしばしば利用されたという。語源的にはギリシア語のakis(突起,矢じりや釣針のかかりの意)に由来するといわれ,アカシアのとげを意味したものと思われる。この枝は古代エジプトでは母神ネイトにささげられ,神自身もアカシアを住みかとしたという。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカシア」の意味・わかりやすい解説

アカシア
あかしあ
[学] Acacia

マメ科(APG分類:マメ科)アカシア属の樹木の総称。日本で一般にアカシアとよぶのは本属とは別で、ハリエンジュ属Robiniaのニセアカシアのことをさす。本属はオーストラリアに多く、アフリカ、アラビア、アメリカなどの熱帯、亜熱帯に約650種分布する。常緑樹で、葉は互生し、小葉の小さい2回羽状複葉の葉をもつか、または、葉柄が平たく変形した仮葉が単葉状になる。花は小球形の頭状に集まり総状花序をなす。花弁は小さく、花弁よりはるかに長い雄しべが多数あって目だつ。果実はさやになり、数珠(じゅず)状または円筒状。一般に根粒菌をもち、やせ地でもよく育ち、日本でも数種が観賞用に暖地で栽培されている。種子は堅いので熱湯処理すると発芽しやすい。

[小林義雄 2019年10月18日]

種類

フサアカシアA. dealbata Linkはオーストラリア南部、タスマニア島原産で、葉は2回羽状複葉で羽片は13~25対あり、初め銀白色で後に灰緑色になる。2~3月に濃黄色頭状の花球が30個以上ついて開く。切り花用や庭木に植え、東京でも寒風を避ければ戸外で越冬する。ギンヨウアカシア(ハナアカシア)A. baileyana F.v.Muell.はオーストラリア原産で、葉は銀灰色の2回羽状複葉で3~4対の羽片がある。2~3月に鮮黄色の花球を多数つけ、切り花用に栽培され、ミモザmimosa(フランス語)とよばれている。葉柄が変形した仮葉をつけるサンカクバアカシア、メラノキシロンアカシア、モリシマアカシアなども栽培されている。本属には有用植物も多く、ソウシジュ、アラビアゴムノキなどがある。

[小林義雄 2019年10月18日]

利用

木材や観賞用以外にも用途は広く、アラビアゴムノキ(アカシア・セネガル)A. senegal (L.) Willd.の幹の分泌物からはアラビアゴムがとれる。同類に東アフリカのステノカルパA. seyal Delile(A. stenocarpa Hochst.)、南アフリカのホリダA. horrida Willd.、アフリカやアラビア半島が原産のアラビアゴムモドキVachellia nilotica (L.) P.J.H.Hurter et Mabb.(A. arabica Willd.)、オーストラリアのフサアカシア(デアルバータ)A. dealbata Linkなどがある。またインドのペグノキ(アセンヤクノキ)A. catechu Willd.の材の煮汁からはカテキュー(阿仙薬(あせんやく))がとれ、収斂(しゅうれん)剤や止血剤、なめし皮料や染料(黒と茶色)に利用される。ほかにキンゴウカン(金合歓)A. farnesiana (L.) Willd.やカベニアVachellia caven (Molina) Seigler et Ebinger(A. cavenia Bert.)の花からは香水がつくられ、ピクナンサA. pycnantha Benth.はゴールデン・ワッツルとよばれてオーストラリアの国花になっている。アカシアの多くは荒れ地の緑化に適し、なかでも深根性のセヤルA. seyal Delileは乾燥地の緑化に有望である。また乾期に茂り雨期に落葉するアルビダFeidherbia albida (Delile) A.Chev.(A. albida Delile)は、熱帯地域での乾期における飼料として注目されつつある。

[湯浅浩史 2019年10月18日]


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百科事典マイペディア 「アカシア」の意味・わかりやすい解説

アカシア

マメ科の一属で多くは常緑高木,オーストラリアを中心とし熱帯,温帯にわたって500種以上ある。葉は偶数羽状複葉をなし,非常に小さい葉をもつか,あるいは普通の葉を欠いて葉柄にあたる部分が左右に平たくなって仮葉をなす。花は放射相称で,黄色のものが多いが,まれに白色で,球形の頭状花序または円柱状の穂状花序をなす。花弁は5個だが目だたず,おしべは数十個あり,花の上に長く出ている。豆果は花の割合に大型で扁平。日本にはフサアカシア(アカシア・デアルバタ),ギンヨウアカシア(アカシア・ベイレヤナ),モリシマアカシア,サンカクバアカシア,ヤナギバアカシア,ウロコアカシア,ソウシジュなどが温室か暖地に植栽される。切花に用いられるほか,タンニン,アラビアゴム等をとる有用種も多い。なおいくつかの種類は日本ではミモザともいい,さらにハリエンジュ(別名ニセアカシア)を俗にアカシアともいう。
→関連項目アセンヤクノキアラビアゴムノキオジギソウ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アカシア」の意味・わかりやすい解説

アカシア
Acacia

マメ科のアカシア属の総称。この類はオーストラリアおよびアフリカを中心とする熱帯地方に数百種知られ,常緑または落葉高木が多い。熱帯では花木として庭園に植えたり並木とするほか,材が堅く耐久性があるので,建築,車材,その他家具材として有用である。またアラビアゴムやタンニンなどの原料となるものもある。日本では関東以西の暖地で初夏に花木として栽培され,切り花にもされる。なかでもフサアカシア A. decurrensは黄金色の花が直径 1.5cmぐらいの球状に集って枝一面につき非常に美しい。なお,北海道や本州の山地で植えているニセアカシアは別属の植物で,ここでいうアカシアには含まれない。

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デジタル大辞泉プラス 「アカシア」の解説

アカシア

日清紡ペーパープロダクツが販売するトイレットペーパーの商品名。再生紙を100%使用。シングル、4ロール入り。

あかしあ

日本のフェリー。舞鶴(京都府)から小樽(北海道)を結ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内のアカシアの言及

【豆】より

…どちらもマレーからインドネシアにかけての村や,その近くに栽植され,利用されている。アフリカのサバンナ林域にはアカシアAcaciaをはじめ多数のマメ科樹木が,分化しているが,それらのなかで食用とされるものがいくつかある。このサバンナ系のマメ科樹木で,インドや東南アジアに広く栽培されるものにタマリンドがあり,しばしば街路樹や公園樹とされるが,インドでは重要な食用樹でもある。…

【ワトル】より

…マメ科の主としてモリシマアカシアAcacia mollissima Willd.(英名black wattle)の樹木,またはそれからとったタンニンをいう。樹皮を熱水で煮だし,水分を除くと,エキスが残る。収率は30~40%。エキスのタンニン含量は70~80%にも及ぶ。南アフリカ共和国が世界のワトル生産のほとんどすべてを賄う。ワトルは動物の皮をなめすのに使われるだけでなく,化学的に変性して,接着剤,貯水池の浄化剤などにも使われる。…

【ニセアカシア】より

…日本には明治はじめころ渡来した。じょうぶで生長が早く,アカシアの俗称で,街路樹,砂防用などとして広く植えられた。根から萌芽する性質が強く,しばしば野生化している。…

【豆】より

…どちらもマレーからインドネシアにかけての村や,その近くに栽植され,利用されている。アフリカのサバンナ林域にはアカシアAcaciaをはじめ多数のマメ科樹木が,分化しているが,それらのなかで食用とされるものがいくつかある。このサバンナ系のマメ科樹木で,インドや東南アジアに広く栽培されるものにタマリンドがあり,しばしば街路樹や公園樹とされるが,インドでは重要な食用樹でもある。…

※「アカシア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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