ヒッパリオン(その他表記)Hipparion

改訂新版 世界大百科事典 「ヒッパリオン」の意味・わかりやすい解説

ヒッパリオン
Hipparion

奇蹄目ウマ科の絶滅した哺乳類。体長2m,肩高1.2mぐらいの小型のもので,前後趾とも3趾のメリキップスMerychippusより分化したグループの一つとされ,メリキップスと同じく3趾ではあるが,中央の1趾のみが機能し体重を支えて速く走ることができた。中国では三趾馬(さんしば)といい,化石を多産する赤色土層は〈三趾馬赤土層〉とよばれている。ヨーロッパ,アフリカ,アジアでは中新世後期から更新世初期,北アメリカでは鮮新世前期から更新世初期に広く分布し,地域ごとに多種多様なものが知られている。日本でも仙台の竜ノ口層からその化石の産出が知られている。

 ウマを意味するギリシア語のヒッポスがそのまま学名になった。現生のウマ(エクウス)と同様に草原適応者であるが,現生のウマとは別系統であり,先祖-子孫の関係はない。更新世初期に優勢となったエクウスによって生態的地位を奪われた。今日のアフリカのサバンナにおけるシマウマに相当したとされ,500万年から1000万年前には,このようなゾウキリン,サイにヒッパリオンをともなうヒッパリオン動物群が,地中海周辺,中央アジア,中国の哺乳動物相を特徴づけていた。これらは乾燥した草原環境を示す。
ウマ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒッパリオン」の意味・わかりやすい解説

ヒッパリオン
Hipparion

奇蹄目ウマ亜目ウマ科に属し,新第三紀鮮新世にいた小型のウマ。新第三紀中新世のメリキッパス Merychippus から分化した。ロバぐらいの大きさで,足の指は前後肢ともに 3本あり,このため中国において三趾馬(さんしば)の名がついた。高歯冠,エナメル質の複雑な入り組み方の臼歯錐をもち,門歯には孔がある。頬歯は柱状であるが高さは現生のウマの約半分。ユーラシア,北アメリカ,アフリカに分布していた。(→奇蹄類

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世界大百科事典(旧版)内のヒッパリオンの言及

【ウマ(馬)】より

…中新世の後期は,全世界的な乾燥化があり草原性の環境が拡大したが,それに伴ってウマ科の第2回の大放散が見られた。パラヒップスの子孫のメリキップスMerychippusの体の構造は,より草原生活へ適応しているが,このほか小型のナンニップスNannippusヒッパリオン,大型のプリオヒップスPliohippusなどが出現している。ヒッパリオンは,北アメリカからユーラシアへ移動し,それまでの森林生活者のアンキテリウムと交代し,さらにサバンナの環境にまで進出し,次の第四紀の初めに,1指性のエクウスが出現するまで各地に残存していた。…

【絶滅生物】より

…恐竜類も白亜紀末までに絶滅し,新生代まで生き続けた種は一つもない。恐竜類絶滅の原因はいまだ謎であるが,鮮新世初頭に北アメリカからアジアに進出し,ユーラシアとアフリカで繁栄した3本指のウマ,ヒッパリオン属が鮮新世末に絶滅したのは鮮新世後期に現れたウマ属との,ヨーロッパのホラアナグマが更新世末に絶滅したのはアジアからヨーロッパへ進出したヒグマとの競合の結果と見られている。競合は絶滅をうながす原因の一つである。…

【鮮新世】より

…新生代第三紀の最後の部分で,約500万年前から200万年前までの時代。鮮新世の生物には現在生息している種類が多いが,哺乳類では三趾馬のヒッパリオンや長鼻類のステゴドンなど絶滅したものも少なくない。原始人類とされるラマピテクスはこの時代に生存した。…

※「ヒッパリオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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