哺乳(ほにゅう)綱の有蹄類の1目で、後ろ足の指が1本か3本の奇数のためにこの名がある。奇蹄目Perissodactylaの仲間は、ほとんどひづめだけを地につけて歩く蹄行性で、走るのに適した体制をもち、胴(とくに胸)が長く肺が大きい。前腕骨と下腿骨(かたいこつ)は、それぞれ上腕骨と大腿骨よりも長く、前足の中手骨と後ろ足の中足骨が比較的長く、歩幅を大きくとるのに適する。指は前足に1本か3ないし4本、後ろ足に1本か3本しかなく、それぞれよく発達したひづめを備える。前後足の軸は他の指よりも大きい第3指を通り、おもにこの指で体重を支える。鎖骨がないため、前肢はほとんど左右には動かず、前後にのみ動く。後ろ足のかかとにある距骨は、上端が滑車状になっているため、脛骨(けいこつ)との関節の屈曲はきわめて滑らかであるが、下端は平らなので、その下の足根骨(舟状骨)との関節は可動性でない。このため脛骨と後ろ足を偶蹄類ほど強く屈曲することができず、したがって歩幅は偶蹄類に比べると狭い。また踵骨(しょうこつ)は腓骨(ひこつ)と関節しない。頭は臼歯(きゅうし)列が大きいため顔面部が長く、鼻骨は後ろが幅広い。前臼歯は臼歯と同形で四辺形、多くは歯冠部が歯根部よりはるかに長い長歯で、畝(うね)とよばれるエナメル質の隆起部をもつようになり、繊維の多い植物をすりつぶすのに適する。しかし胃は単一で反芻(はんすう)をせず、かわりに盲腸が非常に大きい。胆嚢(たんのう)はない。乳頭は鼠径(そけい)部にあり、陰茎骨がなく、現生のものは骨質の角(つの)を欠く。
系統的には、踝節(かせつ)類から分かれ出た有蹄類に属し、新生代第三紀の暁新世後期に北アメリカに現れている。次の始新世にはブロントテリウム科、ウマ科、サイ科、インドリコテリウム科(バルキテリウム科)、カリコテリウム科など11科が一斉に現れ、当時の有蹄類のなかでもっとも栄えたが、漸新世(ぜんしんせい)から早くも衰え始め、中新世には6科に減ってしまった。これは、おそらく始新世に現れた、より草食に適した反芻する偶蹄類との競合に敗れたためであろう。現在では、上の臼歯の畝がB字形で指が1本しかないウマ亜目のウマ科(家畜のウマとロバを除けば、アフリカとアジアにプシバルスキーウマ、アフリカノロバ、シマウマ類など1属9種)、上の臼歯の畝がF字形で後ろ足の指が3本のサイ亜目のサイ科(前足の指が3本。アフリカと南アジアにクロサイ、インドサイなど4属5種)とバク科(前足の指が4本。南アジアと中央・南アメリカにマレーバク、アメリカバクなど1属約4種)の3科約18種が残存するにすぎない。
[今泉吉典]
ひづめをもった草食,または葉食性の哺乳類の1グループで,後足の指の数がふつう1,または3と奇数のため奇蹄類(奇蹄目)Perissodactylaの名がある。ほとんどひづめだけを地に着けて歩く(蹄行性)。大型の走るのに適した獣で,胴(とくに胸)が長大で四肢が比較的長く,前足の指は1~4本,後足の指は1~3本,それぞれよく発達したひづめを備える。前・後足の第3指が他の指よりも大きく,おもにこの指で体重を支える。前肢を左右に動かすに必要な鎖骨がなく,後足のかかとにある距骨は,脛骨(けいこつ)と関節する上端が滑車状になり走るのに適するが,下端は平らで関節を形成せず,後足の前後運動が偶蹄類ほど自由でなく,したがって歩幅が比較的狭い。また踵骨(しようこつ)は腓骨(ひこつ)と関節しない。頭は大きな臼歯(きゆうし)の列のため顔面部が長く,鼻骨は後ろが幅広い。前臼歯は臼歯と同形で四辺形,多くは歯冠部が歯根部よりはるかに長く,繊維の多い植物をすりつぶすのに適する。胃は単一で反芻(はんすう)をせず,代りに盲腸が非常に大きい。胆囊はない。乳頭は鼠径(そけい)部にあり,陰茎骨がなく,現生のものは骨質の角を欠く。
踝節(かせつ)類から降下したもので,新生代第三紀の暁新世の後期に北アメリカに現れている。次の始新世にはブロントテリウム科,ウマ科,サイ科,インドリコテリウム科(バルキテリウム科),カリコテリウム科など11科がいっせいに現れ,当時の有蹄類の中でもっとも栄えたが,おそらく偶蹄類との競合に敗れて漸新世から早くも衰えはじめ,中新世には6科に減ってしまった。現在では,家畜のウマとロバを除けば,アフリカとアジアにウマ科(プシバルスキーウマ,アフリカノロバ,シマウマ類など1属11種)とサイ科(クロサイ,インドサイなど4属5種),南アジアと中南米にバク科(マレーバク,アメリカバクなど1属約4種)の3科約20種が残存するに過ぎない。
執筆者:今泉 吉典
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